ゴーン日産元会長と贈収賄罪で起訴の仏文化相、パリ市長選に向け辞任へ。ルーブル対応にも批判

フランスのラシダ・ダチ文化相が現職を辞任し、来月のパリ市長選に出馬する意向を示した。ダチ文化相は保守派の共和党に所属し、サルコジ政権でも法相を務めた人物だが、現在は元日産自動車会長カルロス・ゴーンが絡んだ汚職事件で告発されている。

ラチダ・ダチ文化相は自身の収賄容疑を否認している。Photo: Hans Lucas/AFP via Getty Images

来月、フランスではパリ市長選が行われる。この選挙に立候補するため、ラシダ・ダチ文化相が現職を辞任する意向であることが、2月25日付フィナンシャル・タイムズ紙(以下FT)の報道で明らかになった。

ダチは2024年1月、ガブリエル・アタル首相(当時)により、右派の取り込みを狙ったマクロン大統領の中道内閣の一員として文化大臣に任命された。しかし、仏ル・モンド紙は文化相としてのダチの仕事を痛烈に批判。「真の成果というより、人気取りのパフォーマンスの連続だった」とし、「ライブエンタテインメントを軽視し、公共放送の改革に失敗。ルーブル美術館の問題でもつまずいた」と書いている。

サルコジ元大統領が国民運動連合から改名した中道右派・共和党の党員であるダチは、サルコジ政権下で報道官および法相を、2009年から2019年までは欧州議会議員を務めた。

2020年にはパリ市長選に立候補し、現職のアンヌ・イダルゴに挑んだ。イダルゴは、2014年の選挙でパリ初の女性市長となった中道左派・社会党の政治家だ。イダルゴ市長は昨年、再選を目指さないことを表明しているため、今回の最有力候補は同じ社会党のエマニュエル・グレゴワールだと見られている。最近の世論調査によると、1回目の結果ではダチがグレゴワールに僅差で後れを取ったが、2回目はダチがリードしている。

FTの取材にダチは、自身の立候補を「ガラスの天井を打ち破る」取り組みと位置付けた。それは女性としてではなく、マイノリティとしての「天井」だ。モロッコ人とアルジェリア人の両親を持つダチはフランス政府の主要ポストに就いた初のムスリム女性で、FTが指摘するように、共和党員ではあるものの同党の反移民的な言説には否定的な姿勢を取っている。

一方でダチは、現パリ市長が属する社会党を厳しく批判している。FT紙に対しては、「パリは債務危機に陥り、街は汚れ、犯罪が爆発的に増加するなど公共空間は混沌としている」と語り、その政策運営のために2012年以降パリの人口が8%減少していると非難した。

しかし、ダチの立候補にはマイノリティであること以外にも壁が立ちはだかっている。それは、欧州議会議員在任中の汚職容疑で9月に開かれる予定の刑事裁判だ。昨年7月、ダチは日産自動車元会長のカルロス・ゴーンとともに、贈収賄などの罪で起訴に当たる刑事裁判所移送が決定した。日産と仏ルノーが設立した統括会社から顧問料90万ユーロ(約1億6000万円)を受け取ったとされるダチは、法的コンサルタント料だと主張。一方、捜査当局は顧問としての活動実態はなく、EUの規則で違法とされるロビー活動の対価だと見ている。

文化大臣の後任については、エンタテインメントメディア大手DEADLINE(デッドライン)の国際映画特派員であるメラニー・グッドフェローが、マクロン大統領の文化顧問であるカトリーヌ・ペガールが最有力候補だと報じている。ペガールはヴェルサイユ宮殿・美術館・庭園の総裁を務めた経歴があり、2024年にはフランスのアルウラ開発庁の文化開発責任者に任命された。同庁はサウジアラビアの世界遺産アルウラ周辺地域の文化的・経済的開発を支援しているが、内部監査を受けるなどの問題も発生している。

今回のパリ市長選挙は選挙制度の変更で、3月15日と22日の2回投票が実施される。(翻訳:石井佳子)

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