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お宝発見! リサイクルショップで1600円だった絵画が19世紀の黒人画家による歴史的作品と判明

フィラデルフィア郊外の小さな町、グレンサイドのリサイクルショップで10ドル(約1600円)で売られていた絵画が、19世紀に活躍した黒人画家ウィリアム・H・ドーシー(1937-1923)の唯一の現存作品であることが分かった。

ウィリアム・H・ドーシー唯一の現存作品とされる絵画。Photo: Courtesy Andy Robbins

2023年6月、人材管理業に就くアンディ・ロビンスは近所にあるプレズビテリアン教会が運営するチャリティショップ「ニューライフ・スリフト」をいつものように訪れ、10ドル(約1600円)の水彩画に目を引かれた。この小さな楕円形の絵画には、教会と水車の近くで釣りをする人物が描かれており、隅に「W.H. ドーシー 1864」という署名があった。ロビンスがのちにInstagramでその発見を共有すると、黒人の歴史を研究するデジタルプロジェクト「1838 Black Metropolis」の研究者の目に留まり、絵画はウィリアム・H・ドーシー(1937-1923)のものであることがわかった。

ウィリアム・H・ドーシーは画家であり、アフリカ系アメリカ人による美術の擁護者でもあった。彼の父トーマスは、メリーランド州で奴隷の身分だったが、1836年に2人の兄弟とともに脱出し、後にケータリング事業で成功し莫大な富を築いた。ドーシーはこの財産で制作活動をする傍ら、自宅でアフリカ系アメリカ人の芸術と歴史に関する博物館を運営した。1867年と1868年には、ペンシルベニア美術アカデミー(PAFA)で自身の絵画作品を展示している。今回ロビンスが見つけた絵画は、展示作品の一つであった《The Fisherman》である可能性が高いという。

拡大図。Photo: Courtesy Andy Robbins

地元メディアのWHYYによると、ロビンスが購入した風景画は、ドーシーの唯一現存する絵画であると考えられている。フィラデルフィアの著名な黒人一家のメンバーとしてのドーシーにまつわる資料は、黒人コミュニティの歴史アーカイブに多数残されているが、彼の作品は美術館のコレクションやオークションの記録にも無い。フィラデルフィア・タイムズ紙が1896年に掲載した記事で、ドーシーは「真の芸術的才能」と評したにもかかわらず、だ。

ロビンスはこの絵画の歴史的意義を知り、ペンシルベニア歴史協会に寄付することを決めた。現在、絵画は同協会で展示されている。(翻訳:編集部)

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