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路上のごみ箱から2000年前のギリシャ彫刻! 神々への奉納品として制作か

1月18日、ギリシャ北部の都市テッサロニキ近郊の路上に置かれたごみ箱から、ビニール袋に包まれた高さ1メートルほどの古代ギリシャ彫刻が見つかった。

ギリシャ・テッサロニキ市街。Photo: Getty Images
ギリシャ・テッサロニキ市街。Photo: Getty Images

1月18日の夜、32歳のギリシャ人男性が、北部の都市テッサロニキ近郊の路上に置かれたごみ箱から黒いビニール袋に包まれた彫刻を発見。男性の地元であるネオイ・エピバテスの警察に通報した。

彫刻は大理石で出来ており、高さ約1メートル。頭部と両腕がなく、流れるようなドレープの衣をまとっていた。警察が考古学者に調査を依頼したところ、彫刻はアレクサンドロス大王の死(紀元前323年)から紀元前31年まで続いたヘレニズム時代のものと特定した。この時代は、アレクサンドロス大王の東方遠征の功績により広範囲の国々が交流し、芸術や文化が大いに栄えた。彫刻は現在さらなる調査が進められており、保存と研究のため地元の文化財当局に引き渡される予定だという。

Photo: Greek Police
ごみ箱から見つかった古代ギリシャ彫刻。Photo: Greek Police

この彫刻について、オックスフォード大学の古典考古学者、アート・スミスはニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、宗教的な目的で制作されたものだろうと語った。スミスは、「古代ギリシャでは、人々は神々に祈り、その恩寵への感謝として奉納を行っていました。この小さなサイズは、神殿や聖域に神々への奉納品として置かれる典型的なものです。個人による高価な捧げものでしょう」と説明する。

一方で、オーストラリア国立大学の古典学者、エステル・ストラズディンスはワシントン・ポスト紙に、大理石という素材と、緩やかな衣服という点から、この彫刻は女神を表現したものであろうと推測する。ストラズディンスも同様に、彫刻は神殿に捧げられた供物であったが、そこから持ち出されたのだろうと考えている。

本物の古代ギリシャ彫刻と判明して以降は、人身および物品の不法取引取締局の文化遺産保護部門の警察官とギリシャ北部組織犯罪対策本部の捜査官が、彫刻が廃棄された経緯について捜査を進めている。先日は一時的に男性1人を事情聴取のため拘束したが、起訴することなく釈放した。

今回はごみ箱という意外な場所だったが、ギリシャの街角で古代ギリシャ彫刻が見つかる事は珍しくない。2024年12月には、アテネでガスパイプラインを敷設中の作業員が、アクロポリス近くで直立した状態で埋められていた、ゼウスとマイアの子であるヘルメス神の像を発見した。

また、テッサロニキでは、2024年11月に開通した地下鉄の長期にわたる建設工事中に、ギリシャ時代、ビザンツ時代、オスマン時代の数万点の遺物や、大理石で舗装されたローマ時代の道路などが見つかった。これらは現在、複数の地下鉄駅で展示されている。(翻訳:編集部)

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