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マクロン大統領が《モナリザ》専用室新設などルーブル美術館の大改修を決定。EU圏外客は入場料値上

エマニュエル・マクロン大統領は1月28日、パリ・ルーブル美術館の大規模な改修計画を発表。その中で、同館で最も人気を集めるレオナルド・ダ・ヴィンチモナリザ》に専用の展示スペースを設けることも明らかになった。

レオナルド・ダ・ヴィンチ《モナリザ》と大勢の観客。Photo: Antoine Boureau/Hans Lucas/AFP via Getty Images

1月28日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ルーブル美術館レオナルド・ダ・ヴィンチモナリザ》が展示されているドゥノン翼「国家の間」で、同館の拡張と改修に関する大規模な計画を発表した。その一環として《モナリザ》に専用の展示室を設けることも明らかにした。

この発表は、ルーブル美術館のローランス・デカール館長が、「美術館は著しい老朽化により早急な改修が必要である」と、ラシダ・ダチ文化相宛ての文書で警告したとル・パリジャンが報じてから1週間も経たないうちのことだった。デカールの文書では、館内の漏水や温度調整の不備による美術品の劣化、トイレや飲食施設の不足、案内表示が充分ではないこと、また、美術館の入り口にあるガラスのピラミッドが夏には過熱し、一年中騒音がひどいことが報告されていた。

デカールはその中で、1日2万から3万人もの来場者が訪れ、展示室の収容能力をはるかに超えている《モナリザ》の展示方法の見直しも求めていた。2024年4月のテレグラフ紙の報道によると、デカールは現在の展示方法は「来場者の失望を招いている」と職員に語り、例えば展示室を地下に新設すれば、来場者により良い鑑賞体験を提供できると提案していたという。デカールは1月28日、マクロン大統領の発表前にもニューヨーク・タイムズに対し、《モナリザ》の現在の展示空間を「激しい混雑の場」と表現。「建物のあらゆる場所が痛んでいます。そして、毎日この展示室では、疲れ果てた観光客たちが作品を一目見ようと押し合いへしあいしている状況なのです」と訴えた。そして、「ルーブル美術館の並外れた来場者数は呪いではなく、誇りの源です。同時に、私たちが公共サービスの使命を忠実に果たしながら、自己革新していくための課題でもあります」と付け加えた。

マクロン大統領が1月28日に行った発表では、2031年にルーブル美術館の東側地下にエントランスを完成させ、新たな展示空間を設けるという。そのうちの1つが《モナリザ》専用の展示室だ。エントランスはLVMHが運営する高級ホテル兼ショッピングモールであるサマリテーヌに繋げられ、来館者数は1200万人(2023年は890万人)にもなるだろうと予測している。

この日、改修工事の費用について具体的な数字は示されなかったが、マクロン大統領の代理人は7億ユーロから8億ユーロ(約1134億円~1295億円)の概算を挙げているとアートニュースペーパーが報じている。また複数の情報筋によれば、デカールは10億ユーロ(約1619億円)と想定しているという。これらの資金調達のひとつの手段として、2026年からEU圏外のルーブル美術館来場者のチケット料金を値上げする予定だ。(翻訳:編集部)

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