ARTnewsJAPAN

舞台は古いガソリンスタンド。Paceとギャラリー・ユディンが新ギャラリーをベルリンにオープン

今春、メガギャラリーのPaceベルリンに新スペースをオープンする。地元のギャラリー・ユディンと共同で開設するもので、1950年代のガソリンスタンドを改装した複合施設が新たな拠点となる。

ペースとギャラリー・ユディンの新スペースは、ベルリンのシェーネベルク地区にある元ガソリンスタンドを利用する。Photo: Courtesy Pace Gallery and Galerie Judin

メガギャラリーのPaceが、ベルリンのギャラリー・ユディンと共同で、5月1日に新スペースをオープンする。ベルリンのシェーネベルク地区にある1950年代のガソリンスタンドを改装したもので、ギャラリーのオフィスやカフェのほか、新聞・出版グループのディー・ツァイト(Die Zeit)が運営する書店が入る複合施設となる。また、ドイツの多くのギャラリーとは異なり、このスペースは日曜日も営業する。

両ギャラリーはまず、こけら落としの展覧会を共同開催し、その後は交互に展覧会を行う。Paceは年に2回、ギャラリー・ユディンは3回の予定で、パートナーとしてではなくそれぞれ別個に運営される。

Paceは現在、世界中に8つの拠点を展開している。ベルリンには2023年にオフィスが開設され、ラウラ・アタナシオがシニアディレクターとして着任した。アタナシオはUS版ARTnewsの取材に、ベルリン進出の理由として「アーティストの美術館展示プロジェクトのサポートを行い、ドイツ各地の文化施設やコレクターとのつながりを深めるため」と語り、次のように続ける。

「豊かな文化的ルーツを持つベルリンは、活気に満ちた国際的な芸術の中心地です。Paceの所属アーティストの多くはベルリンと密接な関係を持ち、あるいは、この都市のダイナミックなアートコミュニティに加わることに強い関心を持っています。私たちは、ベルリンの文化的基盤に貢献するにあたって、ポップアップ展示や共同プロジェクトなど、どんな方法が良いかを時間をかけて検討してきました。新しい展示スペースに根を下ろすことが決まり、とても嬉しく思っています」

アタナシオはまた、ドイツの付加価値税(VAT)の引き下げも、Paceがドイツでの事業展開を決断する上で「プラスに働いた」と付け加えた。欧州連合(EU)の改正VAT指令により、昨年ドイツ政府は美術品販売にかかる付加価値税を2025年1月から7%に引き下げると発表。従来の税率19%は他のEU諸国に比べ不利だとして、ドイツのアートディーラーはかねてから税率引き下げを要求していた。

新スペースがオープンするガソリンスタンドは1954年に建てられたもので、1986年以降は放置されていた。2009年にギャラリー・ユディンが改装を行い、権威ある建築賞を受賞している。また、2022年から24年までは、政治風刺画で知られるベルリン出身の画家、ジョージ・グロスの美術館として使われていた。

ギャラリー・ユディンは、2003年にチューリッヒで設立され、2008年にベルリンに移転。本社は新スペースに近い、元新聞印刷工場の建物にある。同ギャラリーは声明で、新スペース開設についてこう述べている。

「2011年に(シェーネベルク地区に)移転して以来、この界隈はベルリンのアートシーンの中心地へと発展してきました。新ナショナルギャラリーや、(建設中の)ベルリン・モダンのすぐ近くでもあります」

さらに、ギャラリー・ユディンの共同オーナー、ペイ・マティウス・カーステンスは、US版ARTnewsの取材にこう答えている。

「ベルリンが今も、ヨーロッパにおけるアート制作の中心地であるのは間違いありません。変化の中にありますが、コレクターやキュレーターが集まる活気ある場所でもあります。私たちの目的は、ベルリンのアートシーンに新たな発表と交流の場を提供すること、そして、それによってベルリンのカルチャーシーンをより発展させることです。ここ数年の厳しいアート市場の状況は、ギャラリー側が信頼のおける永続的な関係を維持することがいかに重要かを示しています」(翻訳:石井佳子)

from ARTnews

あわせて読みたい