ベルリンが約210億円の文化予算削減を強行。右派の市長は「前左翼政権のせい」と責任転嫁
文化機関や専門家たちによる数週間に及ぶ抗議や警告にもかかわらず、ベルリン市は約210億円の文化予算削減を強行した。右派のカイ・ウェグナー市長は、この削減は「ベルリンの未来を守る」施策であり、「緊縮財政の原因は前左翼政権による気候変動関連の取り組み」であると訴えた。
12月5日にベルリン市議会上院で可決されたことを受け、ベルリン市は12月19日、芸術分野からの数週間にわたる抗議や警告にもかかわらず、文化予算の12%にあたる1億3000万ユーロ(現在の為替で約210億円、以下同)の削減を強行した。この決定は、同市の2025年の支出計画の一部であり、主要な文化拠点としてのベルリンの地位が脅かされる可能性や文化機関の閉鎖に対する懸念が広がっている。しかも、これまでの計画では、ベルリンの文化施設に新たな資本が投じられるはずだった。というのも、ドイツは2021年に、前年から1億5500万ユーロ(約252億8000万円)増となる21億ユーロ(約3425億円)という記録的な連邦文化予算を承認したからだ。
ベルリンでは、この予算案に対して芸術家支援団体や美術館の重役らが強い反発を示すと同時に、予算削減が与える影響を文化専門家たちと協議するよう呼びかけてきた。しかしこうした関係者たちの努力虚しく、予算は強行されることとなった。
アートニュースペーパーによれば、ベルリンのKWインスティテュート・フォー・コンテンポラリー・アートのディレクター、エマ・エンダービーは、2025年の美術館予算の詳細が1月まで決まらないため、スタッフとの契約更新もできず、パブリック・エンゲージメント・イニシアチブを含むプログラム計画も縮小せざるを得ないと語ったという。美術館はすでにこの予算削減の影響を受けており、政府の決定は「非常に近視眼的」とエンダービーは憤りを隠さない。
一方、ドイツキリスト教民主同盟のメンバーであるカイ・ウェグナー市長は、厳しい1年を経て市の歳入が減少したため、財政の持続可能性を維持するためにこの予算削減は不可欠であると語っている。また、この削減はベルリンの未来を守るために有効であると主張し、前左翼政権による気候変動関連の取り組みが市の財政を圧迫し、財政緊縮の原因となったと指摘。「文化セクターを含め、マインドセットを変える必要がある」と訴えている。
また、アートニュースペーパーの取材に応じたベルリン美術館協会共同会長のパウル・シュピースは、突然の減額によって、一部の施設は合意された契約期間前に仕事の契約をキャンセルせざるを得なくなる可能性があると警告し、多くの組織には取り戻すための予備予算がないと語った。
民間資金を持たないドイツの美術館は、特に厳しい課題に直面している。多くの場合、コレクションの運営にかかる固定費が予算の約80%を占めているため、多くの展示や補助プログラムが中止の危機にさらされている。
一部の専門家は、ドイツの公立美術館は法的に、アメリカやヨーロッパの他の地域の美術館のように民間の慈善事業に頼ることができないため、国際的なクリエイティブ・ハブと比較すると、その将来性が不確かであると指摘している。
from ARTnews