国立新美術館初のクラウドファンディングがもうすぐ締め切り。展覧会で建築家の幻のプロジェクトを実現
国立新美術館は、3月19日から開催される展覧会「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」の開催費用の一部を募るため、同館初となるクラウドファンディングを実施している(1月31日まで)。

国立新美術館は、2025年3月19日から6月30日まで開催される展覧会「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」の開催費用の一部を募るため、初となるクラウドファンディング「国立新美術館|時代を映す、挑戦的でダイナミックな展示をこれからも」を実施中だ。
クラウドファンディングは、2024年11月18日から「READYFOR」で行われており、目標金額は1000万円。集まった資金は、展覧会の目玉となる原寸大の建築展示の制作費に充てられる。
国内最大級の総展示スペース(1万4000平方メートル)を誇る同館は、開館以来、収益性だけにとらわれない、意義ある展覧会を企画してきた。特に最大8メートルの天井高と約2000平方メートルの広さを持つ企画展示室は、可動式の壁によって自在に空間を変化させることができ、その特徴を活かした展示を開催している。だが、このような企画展の多くは、基本の予算に加え、企業からの資金やグッズ販売、国からの助成金などを獲得して実現しているという。
同館で2023年に個展を開催した大巻伸嗣は、クラウドファンディングのページで次のように語っている。
「個展の設置作業中に『床を黒くしたい』と思ったときに、それを学芸員の方々に伝え、関係する皆さんにも理解をいただいて実現しました。それでも数百平米と範囲が広いので、その「ちょっと」のことで、ちょっとじゃないお金が動いていく。美術館というと、資金は潤沢にあるように見えて、実は作家がその空間に挑戦するということは、ちょっとのことに本当にお金がかかってしまうんですね。そのちょっとの積み重ねで一つの展覧会が出来上がるのですが、国立新美術館で展示をするということを経験して、より、はっきりと感じました」
本展「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」は、20世紀に始まった住宅をめぐる革新的な試みを、7つの観点から多角的に検証する大規模な企画展だ。衛生、素材、窓、キッチン、調度、メディア、ランドスケープという切り口から、モダン・ハウスの特徴を読み解き、リナ・ボ・バルディ、藤井厚二、広瀬鎌二、アルヴァ・アアルト ムーラッツァロらが手掛けた特に注目すべき14の傑作住宅を中心に、写真、図面、スケッチ、模型、家具、テキスタイル、食器、映像など多様な資料を通じて、100年にわたる住まいの実験の軌跡を辿る。
展覧会の最大の見どころは、建築家ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(1886-1969)の未完のプロジェクト「ロー・ハウス」を原寸大で再現する展示だ。この野心的な試みは、多くの人々に体験してもらうため、無料で観覧できるエリアに設置される。今回のクラウドファンディングでは、この展示のための費用を募っている。
寄付は5000円から100万円までの計22コース。同館の外観をモチーフにした大判トートバッグ、ドリンク10%オフ付きのリユースタンブラー、ロゴ入り筆記セット、ハンドタオルといったオリジナルグッズのほか、国立新美術館学芸課長が語る「展覧会ができるまで」や、休館日の館内を案内する建築探検といった特別体験プログラムなど、クラウドファンディング限定の返礼品を揃えている。
昨今の海外輸送費や資材・物価の高騰により、美術館が理想とする展示を実現するための資金調達は年々難しさを増している。これまで個人向けのメンバーシップ制度を持たなかった同館は、今回のプロジェクトを通じて支援者との繋がりを深め、ファンを増やしていくことも目指している。
また、全国の美術館ではコロナ禍以降、観覧料以外の収入源の確保が共通の課題となっている。同館の広報担当者は「これからの美術館経営のあり方を考えていく中で、支援者の皆さまからのご寄付を収入の柱のひとつとして育てていきたい」と語る。
クラウドファンディング概要
タイトル:「国立新美術館|時代を映す、挑戦的でダイナミックな展示をこれからも」
目標金額:1000万円
募集期間:1月31日(金)23時まで
URL:https://readyfor.jp/projects/nact_2024
「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」
会期:2025年3月19日(水)~6月30日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E、2E(東京都港区六本木7-22-2)