ゲイリー・スティール、スティーブン・ライス(Gary Steele and Steven Rice)
拠点:アメリカ・サンフランシスコ
職業:テクノロジー企業
収集分野:現代アート

2022年11月、ロサンゼルス現代美術館(MOCA)でヘンリー・テイラーの30年にわたる仕事を回顧する大規模展「B Side」が開幕。そのオープニングに出席したゲイリー・スティールとスティーブン・ライスは、2023年10月にニューヨークのホイットニー美術館へと巡回するこの展覧会から、MOCAが作品を入手する手助けをしたいと考えた。そして彼らは、黄色をバックに黒い椅子に座る黒人女性を描いた肖像画《無題》(2020)を購入。当時スティールは、US版ARTnewsにこう語っている。「ヘンリー・テイラーの作品と、文化的な背景を盛り込む彼の手法にはいつも感銘を受けています。私たちは、自分たちが重要だと考えるアーティストと主要な美術館を支援する方法を模索していますが、これがその一例となるでしょう」
最近2人のコレクションに加わった作品には、メアリー・ウェザーフォード、ドロン・ラングバーグ、ラシード・ジョンソン、アリス・ニールなどがある。ニール作品の購入は、ニューヨークのメトロポリタン美術館で2021年に開催された彼女の回顧展「People Come First」がきっかけだった。サンフランシスコ近代美術館の理事を務めるスティールは、その感動をこう語った。「アリスの画風の中でも、私たちが本当に愛している特質がはっきり分かる素晴らしい作品を見つけることができました」
1980年代にヒューレット・パッカードでキャリアをスタートさせたスティールは、ハイテク業界で40年近い経験を積み、複数の企業でCEOを歴任したのち2022年にサイバーセキュリティ企業スプランクの社長兼CEOに就任。翌2023年9月、世界的なネットワークソリューション企業であるシスコシステムズが、スプランクを280億ドル(約4兆円)で買収すると発表した。シスコ史上最大となるこの買収について、ブルームバーグは「ソフトウェアと人工知能を活用したデータへの大規模な投資」、ロイターは「テクノロジー分野で今年最大の買収」と評している。
注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2024年版トップ200コレクターズが発表された2024年10月時点の為替レートによる。