ARTnewsJAPAN

今週末に見たいアートイベントTOP5: 西條茜が考察する作品と身体の関わり方、DIC川村記念美術館が佐倉で最後の展示

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

福田美蘭《水曜日》 1988年 アクリル絵具、合板に貼付した綿布、紙 181.8×227.2 cm
横浜美術館リニューアルオープン記念展「おかえり、ヨコハマ」より、福田美蘭《水曜日》1988年アクリル絵具、合板に貼付した綿布、紙181.8×227.2 cm

1. ジョエル‧シャピロ「Works from 1975 - 2024」(Pace ギャラリー)

Installation View, Joel Shapiro,Pace Tokyo,2025 / Photo by Keizo Kioku,courtesy Pace Gallery
Installation View, Joel Shapiro,Pace Tokyo,2025 / Photo by Keizo Kioku,courtesy Pace Gallery
Installation View, Joel Shapiro,Pace Tokyo,2025 / Photo by Keizo Kioku,courtesy Pace Gallery
Installation View, Joel Shapiro,Pace Tokyo,2025 / Photo by Keizo Kioku,courtesy Pace Gallery

アメリカを代表する巨匠の50年に渡る創作を網羅

アメリカを代表する彫刻家であり、現代の彫刻史にとって重要な芸術家の一人、ジョエル・シャピロの東京での30年ぶりとなる大規模な個展。1975年から現在までの約50年で制作された立体と平面作品を紹介する。

1階では2012年から2024年に制作されたブロンズ作品群を展示する。それらの親密なスケールの作品には生命力、柔和、そして楽しさが満ちている。2階では年代ごとに3つのセクションで構成し、1970年代の初期作品、1989年のブロンズ彫刻、そして近作までと、シャピロの芸術観の変遷を辿る。作品の数々は躍動感、複雑性、そして洗練されたフォルムを特徴とし、ミニマリズムの制約を超越する独自の表現を追求している。

ジョエル‧シャピロ「Works from 1975 - 2024」
会期:2025年1月17日(金)~ 2月22日(土)
場所:Pace ギャラリー(東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA1-2F)
時間:11:00 ~ 19:00(19:00~20:00と日曜の18:00~20:00はアポイントメント制)
休館日:月曜


2. 「西條茜展 ダブル・タッチ」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)

西條茜 《The Melting Laborers#4》 2024年 撮影:来田猛
西條茜 《The Melting Laborers#1、2、3》 2024年 撮影:来田猛
西條茜 《The Melting Laborers#3》 2024年 撮影:来田猛

作品と身体の「関わり方」を考察

若手アーティストが才能をはばたかせる場として2022年に丸亀市猪熊弦一郎現代美術館がスタートした公募展「MIMOCA EYE / ミモカアイ 」。その第1回大賞受賞者である西條茜の個展を開催する。西條は、有機的な造形の陶作品を用いて、鑑賞者が自他の身体へと意識を傾ける瞬間を作り出そうとしている。また、陶磁器の内部が空洞であることに身体との共通点を見出した西條は、近年、内臓を含む身体を想起させる作品を制作し、その内部に息や声を吹き込むパフォーマンスによって、身体の拡張を試みてきた。

本展では陶の作品のほか、制作において息を吹き込む過程のあるガラス作品も発表し、作品と身体との関わり方をさらに考察する。そのほか、作品を介したパフォーマンスでは、運搬という行為を新しく取り入れ、作品と身体、身体相互、さらに身体とそれを取り巻く環境はどのようなコミュニケーションを取り得るのかを探る。

「西條茜展 ダブル・タッチ」
会期:2025年1月26日(日) ~ 3月30日(日)
場所:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(香川県丸亀市浜町80-1)
時間:10:00 ~ 18:00(入館は17:30まで)
休館日:月曜(ただし2月24日は開館)、2月25日


3. 米谷健+ジュリア「CRYSTAL PALACE」(art cruise gallery by baycrew’s)

世界の経済発展に潜む影を問う代表作を披露

インスタレーション、パフォーマンス、立体や映像など様々な表現方法で、環境問題や社会問題を美的かつユーモア溢れる作品に変換し、国際的に高い評価を受けているアートユニット、米谷健+ジュリアによる新作展。

代表作である、ウランガラスを用いたシャンデリアのインスタレーション《クリスタルパレス:万原子力発電国産業製作品大博覧会》では、一点一点に原発保有国の名前がつけられ、作品のサイズは各国の原発から作り出される電力の総出力規模に比例している。1851年に開催された世界初の万博、ロンドン万国博覧会の会場として建てられた全面ガラス張りの巨大建造物「クリスタルパレス」にちなんだ本作は、世界的な産業政策と経済発展の影に存在する問題を、ウランガラス特有の妖しくも美しい緑の光で照らし出す。

米谷健+ジュリア「CRYSTAL PALACE」
会期:2025年1月30日(木)~ 3月16日(日)
場所:art cruise gallery by baycrew’s(東京都港区虎ノ門2-6-3 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー3F SELECT BY BAYCREW’S内)
時間:11:00 ~ 20:00(入場は30分前まで)
休廊日:なし


4. DIC川村記念美術館1990-2025 作品、建築、自然(DIC川村記念美術館)

101室 印象派からエコール・ド・パリへ
102室 レンブラント・ファン・レイン 撮影:渡邉修
200室 撮影:高橋マナミ
木漏れ日が差す廊下 撮影:高橋マナミ

佐倉の地で34年の歴史に幕。コレクション180点を展覧

佐倉の地で1990年に開館して34年。2025年3月一杯で休館する前の最後となるコレクション展示だ。館内全ての展示室を用いて、同館が設立当初から掲げてきた作品・建築・自然の調和というコンセプトに基づき、約180点の作品を展覧する。

光の零れる窓のある廊下で結ばれた島々のような展示室は、マーク・ロスコのシーグラム壁画を展示するために作られた「ロスコ・ルーム」をはじめ、それぞれ全く異なる意匠を持つ11の空間として設計された。作品との出会いの場として、さまざまな工夫が凝らされた建築についても改めて知ることが出来るだろう。庭園の野外彫刻を含め、コレクションの流れを漏れなく目に収めておく貴重な機会だ。

DIC川村記念美術館1990-2025 作品、建築、自然
会期:2025年2月8日(土) ~ 3月31日(月)
場所:DIC川村記念美術館(千葉県佐倉市坂戸631)
時間:9:30 ~ 17:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜(2月24日、3月31日は開館)、2月25日


5. 横浜美術館リニューアルオープン記念展「おかえり、ヨコハマ」(横浜美術館)

森村泰昌 《私の中のフリーダ(自分との対話1)》 2001年 発色現像方式印画  195×175 cm 寄託
奈良美智 《春少女》 2012年 アクリル絵具、カンヴァス  227.0 x 182.0 cm 横浜美術館蔵 ©YoshitomoNara
福田美蘭《水曜日》 1988年 アクリル絵具、合板に貼付した綿布、紙 181.8×227.2 cm
ペーター・ベルンハルト・ヴィルヘルム・ハイネ(伝) 《ペルリ提督横浜上陸の図》 1854年以降 油彩、カンヴァス 53.3 × 80.5 cm  横浜美術館蔵(原範行氏・原會津子氏寄贈)
《人面付土器》(鶴見区上台遺跡) 弥生時代後期 H32cm 横浜市歴史博物館蔵 (神奈川県指定重要文化財)

いよいよ全館オープン! 横浜を「多様性」という視点から見つめる

3年の改装工事を経て、いよいよ全館リニューアルオープンを迎える横浜美術館。蔵屋美香館長自らの企画による企画展では、「横浜」をキーワードに「多様性」という視点から、コレクションの名品を含む200点以上を紹介する。

展覧会は全8章で構成され、開港以前の横浜に暮らした人々、女性、子ども、さまざまなルーツを持つ人々など、これまであまり注目されてこなかった存在に光を当てる。セザンヌ、ピカソ、マグリットなど近代美術の名作から、奈良美智など現代美術作品まで、幅広いコレクションを新たな視点で読み解く。さらに子どもたちのために特別に選んだ作品を展示する「子どもの目で見るコーナー」も会場内に設けられ、親子で美術を楽しむ仕掛けも用意されている。

横浜美術館リニューアルオープン記念展「おかえり、ヨコハマ」
会期:2025年2月8日(土)~ 6月2日(月)
場所:横浜美術館(神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1)
時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:木曜日(3月20日は開館)、3月21日

あわせて読みたい