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フランク・ロイド・ライトの息子が手掛けたチャペルの解体が決定。「後世に残すため時間との戦いに挑む」

フランク・ロイド・ライトの息子、フランク・ロイド・ライト・ジュニアによって設計された礼拝堂、ウェイフェアズ・チャペルが解体されることがこのほど決定した。カリフォルニア州で起きている地滑りによってチャペルが破壊されており、修復不可能になる前に解体して今後の移築先を探すという。

大雨による土砂崩れで閉鎖されたウェイフェアズ・チャペル。Photo: AFP via Getty Images

カリフォルニア州のランチョ・パロス・ベルデスにあるウェイフェアズ・チャペル。地滑りによる損傷によってこの礼拝堂は、2024年2月から閉鎖されており、再建するための土地が見つかるまで解体・保管されることが決まった。

フランク・ロイド・ライトの息子、フランク・ロイド・ライト・ジュニア(通称ロイド・ライト)によって1951年に建設されたガラス張りの礼拝堂は、2023年に米国国定歴史建造物に指定された。礼拝堂が建てられているポーチュギース・ベンドは、1950年代から地盤が頻繁に移動しており、道路用地の勾配をつけようとしたところ、地滑りが発生したのだ。

ウェイフェアズ・チャペルのエグゼクティブ・ディレクターを務めるダン・バーシェットは次のような声明を発表している

「ポーチュギース・ベンドで発生した地滑りによって、ウェイフェアズ・チャペルに損害が及んでおり、多くの人が悲しんでいます。家が破壊されてしまった人たちに心よりお祈り申し上げます。私たちは、この象徴的なチャペルを今の場所、あるいはランチョ・パロス・ベルデスの近隣に、これまでとまったく同じような状態で再建設することを約束します。これまでチャペルを支えてきた建築資材を慎重に解体し、後世に残すために必要な措置を早急に講じてゆく所存です」

礼拝堂の解体と再建には4年を要する見込みで、建築物の保全を専門に行う建設会社Architectural Resources Groupが主導するという。ウェイフェアズ・チャペルでは水道管や電気が使えなくなり、ガラス窓が破壊され、壁や骨組みが曲がっていることを声明で明らかにし、「これ以上の損傷が加えられてしまうと、保存が不可能になってしまう」と記している。

Archigectural Resources Grouoのプリンシパルを務めるケイティ・ホラックが発表した声明には、次のように書かれている。

「レッドウッドの古木から作ったグルラム、青い屋根瓦、窓を支えるために張り巡らされた鉄のフレーム──。ロイド・ライトが礼拝堂を建設するために使った当時の資材は、現在再現することはできません。こうした素材は日を追うごとに失われ、取り返しの付かないほどの被害を負っています。私たちのチームは、これらの建築部材を再び組み立てられるよう文書化し、安全な場所に移動させるために、時間との戦いに挑んでいるのです」

近隣の地盤はこの数年で顕著に変動しており、チャペル近くの高速道路は老朽化が急速に進んでいる。また、ランチョ・パロス・ベルデスは、この問題を軽減し地盤変動による被害を修復するために1400万ドル(約22億円)以上の資金を割り当てている。

「人々は不安を感じながら暮らしていることでしょう」と、ランチョ・パロス・ベルデスのシティ・マネージャーを勤めるアラ・ミラニアンはニューヨーク・タイムズに語っている。「何年にもわたって私たちは、大規模な被害が及ぶことを推測してきました。こうした問題を解決するためにも取りかかれることから積極的に行っていくことが重要です」(翻訳:編集部)

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