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今週末に見たいアートイベントTOP5: 奈良美智の40年を振り返る大規模個展、龍づくし! 恒例「博物館に初もうで」

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

奈良美智《Ennui Head》2022年、ウレタン塗装・アルミニウム、243×257×149cm、作家蔵 ©Yoshitomo Nara

1. 奈良美智: The Beginning Place ここから(青森県立美術館)

奈良美智《Midnight Tears》 2023年、アクリル絵具・キャンバス、240.5 x 220cm、作家蔵 ©Yoshitomo Nara

奈良美智の初期から現在まで40年の歩みを振り返る、10年ぶりの個展

奈良美智は1959年、青森県弘前市に生まれた。2000年代から国内外で数々の個展や展覧会を開催し、国際的に高い評価を獲得してきた。孤独にたたずむ鋭い眼差しの子どもを描いた絵画や、どこか哀しげな犬の立体作品は、国や世代を超えて多くの人々の心を捉える。

奈良ゆかりの青森県立美術館で開催される本展は、10年ぶり、2度目の個展となる。展覧会タイトルは、奈良の創造の「はじまりの場所」としての「故郷」を示唆すると同時に、作品との出会いが生み出す「はじまりの場所」を意味する。奈良の初期作品が展示される「家」、繰り返し描いてきたモチーフ「女の子」の変遷を追う「積層の時空」、世界各地を旅する奈良の写真や陶芸を展示する「旅」、奈良作品の「反戦」のテーマと音楽との関係性などメッセージ性のある作品を集めた「No War」、高校時代に通い詰めたロック喫茶の店舗を再現した「ロック喫茶『33 1/3』と小さな共同体」の5つのテーマで、奈良のこれまでの仕事と半生を振り返る。

奈良美智: The Beginning Place ここから
会期:2023年10月14日(土)~ 2月25日(日)
会場:青森県立美術館(青森市大字安田字近野185)
時間:9:30 ~ 17:00(入場は30分前まで)

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2. Houxo Que 「YOU CAN (NOT) RELATE.」(KANA KAWANISHI GALLERY)

“autopsy_report_yellow” 2023 | silkscreen on paper | 1040 × 780 mm | © Houxo Que, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

初めて自身のルーツと向き合い、関東大震災の悲劇をテーマにした作品を初公開

Houxo Que(ホウコォ ・ キュウ)は、10代の頃にグラフィティと出会い、ストリートアーティストとして活動を開始。近年では、水面が光を受けるインスタレーションや、鉄パイプを貫通させたまま点滅するディスプレイなど、ペインティングをマルチに発展させた作品を制作する。

キュウは日本人の父、中国人の母、台湾人の祖母、韓国人の曽祖母を持つ。これまで自らのルーツを作品に反映させることは避けてきたが、1923年の関東大震災から100年目の節目に開催される本展では、そのようなルーツを持つキュウだからこそ、表出せざるを得ない形象を探った。本展のメイン作品​《Monument for unrecognized bodies》は、関東大震災の直後に引き起こされた朝鮮人虐殺を題材にしたモニュメント。命を絶たれ、埋められ、100年が経過して人々の記憶からも忘れ去られようとしている存在とはどのようなものか探るために、AIと対話してコンセプトを練り、それらの存在に自らを投影し制作した。メイン作品から派生したシルクスクリーンの《autopsy_report》は、「検死報告書」という意味があり、その奥には加害と被害の表裏一体性が見え隠れする。

Houxo Que 「YOU CAN (NOT) RELATE.」
会期:2023年12月15日(金)~ 1月27日(土)※12月29日(金)~1月8日(月・祝)休廊
会場:KANA KAWANISHI GALLERY(東京都江東区白河4-7-6)
時間:13:00 ~ 18:00(土曜は19:00まで)


3. 久門剛史 「Dear Future Person,」(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA)

撮影:来田 猛 提供:京都市立芸術大学

同スペースの移転こけら落とし展。久門剛史が大型インスタレーションを発表

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAは、2023年10月にオープンした京都市立芸術大学キャンパス内に移転。新スペースのこけら落としとして、同大彫刻専攻を修了し、京都を拠点に活躍する久門剛史の個展を開催する。久門は、自らの体験を通じて自然、地球、そして宇宙と人間との関係を考察し、それらに着想を得た音、光と造形物で構成するインスタレーション作品を中心に制作してきた。

本展は、久門が展示室に合わせて制作した、新作の大型インスタレーションが展開される。タイトル 「Dear Future Person,」にあるように、1人の表現者として「未来の人」に向けたメッセージとしても受け取れるという。これら久門の作品を通して、現代を生きる私たちがそれぞれの現在地と、来たるべき未来について改めて考えるきっかけが得られるかもしれない。

久門剛史 「Dear Future Person,」
会期:2023年12月16日(土)~ 2月18日(日)
会場:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(京都市下京区下之町57-1 京都市立芸術大学 C棟1F)
時間:11:00 ~ 19:00


4. 「新収蔵作品展Present for You わたしからあなたへ/みんなから未来へ」(町田市立国際版画美術館)

ヨルク・シュマイサー「故宮への入口、北京」 1981年 銅版画

新収蔵品からヨルク・シュマイサーら多彩な100点を初披露

1987年4月の開館以来、国内外のすぐれた版画作品と資料を収集・保存し、版画をテーマとする展覧会を開催してきた同館。本展は、2022年度から2023年上半期に新たに収蔵された445点から選抜した作品を披露し、同館の重要な事業である作品収集について紹介する。

ドイツに生まれ、京都や中東など世界各地を旅しながら版画を制作したヨルク・シュマイサー(1942-2012)、昭和初期に活躍し、幻想的な作風が今も根強いファンを持つ谷中安規(1897-1946)、「生命とは何か」を問う細密な点描銅版画作品を制作し続ける池田俊彦(1980-)らの主な作品約100点を展示する。ほか展示作家は勝平得之、笠木實、招瑞娟、詹永年、若林奮、井田照一、榎倉康二、門坂流、藤田修。

「新収蔵作品展Present for You わたしからあなたへ/みんなから未来へ」
会期:2023年12月21日(木)~ 2024年2月18日(日)
会場:町田市立国際版画美術館(東京都町田市原町田4-28-1)
時間:10:00 ~ 17:00(土日祝は17:30まで、入場は30分前まで)


5.  博物館に初もうで 謹賀辰年― 年の初めの龍づくし ―(東京国立博物館)

重要文化財 龍濤螺鈿稜花盆(りゅうとうらでんりょうかぼん)中国 元時代・14世紀

龍がモチーフの名作がずらり。長谷川等伯・国宝「松林図屛風」も公開

東京国立博物館の年始の恒例企画として21年目を迎える「博物館に初もうで」。その年の干支や吉祥のモチーフにまつわる名品をそろえ、新年の訪れを祝してきた。2024年の干支「辰=龍」は、十二支の動物のなかで唯一の、想像上の生き物だ。それゆえに表現もさまざま。凄みのある龍や、時にユーモラスな姿が技巧を凝らしてあらわされる。書初めならぬ“ミュージアム初め”にぜひ足を運びたい。

本館特別1室には、龍の作品がそろい踏み。重文で頭の上で龍がにらみをきかせる「十二神将立像(辰神)」(鎌倉時代、京都・浄瑠璃寺伝来)のほか、「龍飛鳳舞」の4字が書かれた清朝第4代皇帝・康熙帝の筆などが展示される。体をうねらせる五爪の龍を螺鈿で表現した、木製漆塗の重文「龍涛螺鈿稜花盆(りゅうとうらでんりょうかぼん)」(中国 元時代・14世紀)も目玉の一つだ。吉祥作品では、長谷川等伯筆・国宝「松林図屛風」(本館2室、1月14日まで展示)も見逃せない。金糸や絹糸で松竹梅や鶴亀などの吉祥模様を表した振袖「打掛 紅綸子地(べにりんずじ)松竹梅鶴亀模様」(江戸~明治時代・19世紀、3月3日まで展示)も正月らしい華やかさをまとう。

博物館に初もうで 謹賀辰年―年の初めの龍づくし―
会期:2024年1月2日(火)~ 28日(日)
会場:東京国立博物館(東京都台東区上野公園13-9)
時間:9:30 ~ 17:00  (金曜と土曜は19:00まで、入場は30分前まで)

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