AI生成画像が写真コンテストに入賞!? 作家は受賞を辞退するも「未来を恐れてはいけない」
著名な写真コンテスト、ソニー・ワールド・フォトグラフィー・アワードで受賞した作品がAI生成画像であったとして、作家が賞を辞退する騒動が起こった。
問題の作品は、ボリス・エルダグセンの《The Electrician》で、一見すると、2人の女性が写っている古い写真のように見える。
この作品は「Pseudomnesia」と呼ばれるシリーズの一点で、AIジェネレーターに何度も言語を読み込ませて制作された。その過程で、アウトペインティングなどの技術を用いて作品を加工したという。
エルダグセンは作品について、次のように語っている。
「写真が絵画に取って代わったように、AIは写真に取って代わるでしょう。未来を恐れてはいけません。私たち自身が世界を狭めて生きにくくしているだけなのです」
2023年3月に作品がコンペティションに選ばれたとき、エルダグセンは自身のウェブサイトに、彼が言うところの「イメージ」が入選したことを「嬉しい」と書いていた。しかし、先週、受賞したときには、違った感想を口にした。
「AI画像と写真は、このような賞で競い合うべきではありません。それらは異なる存在であり、AIは写真ではありません。したがって、私はこの賞を受け取りません。私たちは今、何を写真とみなし何を写真とみなさないかについて、オープンな議論を必要としています。写真という傘は、AI画像を招き入れるのに十分な大きさなのでしょうか、それともそうではないのでしょうか」
エルダグセンは、クリエイティブ部門で受賞した賞金を、ウクライナのオデーサで開催される写真祭に寄付するよう審査員に伝えた。
ソニー・ワールド・フォトグラフィー・アワードを主催する世界写真機構は、エルダグセンの作品が受賞したことや、その後のエルダグセンの対応に対して周囲の顰蹙を買った。
同機構受は、声明で、「彼が賞の辞退を申し出たため、彼をコンペティションから除外した」と発表した。その後次のようにコメントしている。
「彼は意図的に私たちを惑わそうとしました。もはや、彼と有意義で建設的な対話をすることができないと思っています。私たちは、このテーマの重要性と、今日のイメージメイキングに与える影響を認識しています。
今後はさまざまなプログラムを通じてこのテーマをさらに探求し、ディスカッションすることを歓迎します。AI生成プログラムの要素は、芸術的文脈に関連していますが、アワードはこれまでも、そしてこれからも、写真家やアーティストの卓越性とスキルを支持するためのプラットフォームであり続けます」
この騒動は、2022年8月、コロラド州フェアのアートコンペティションでAIプログラム、ミッドジャーニー(Midjourney)が生成した作品が優勝し、問題となった出来事を彷彿とさせる。(翻訳:編集部)
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