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AIのアンディ・ウォーホルがナレーターに。ネットフリックスのドキュメンタリーが3月配信

ネットフリックスで3月9日から配信されるアンディ・ウォーホルのドキュメンタリーシリーズ。番組の中ではウォーホルが自分の日記を読み上げているが、その声は本人ではなく、彼の声に似せたAI(人工知能)によるものだ。こうしたAIで故人を生き返らせる最近のトレンドは、映像制作者の間で物議を醸している。

アンディ・ウォーホル Associated Press
アンディ・ウォーホル Associated Press

2月23日に公開された「アンディ・ウォーホル・ダイアリーズ」の予告編によると、アンドリュー・ロッシ監督は、アンディ・ウォーホル財団の許可を得てこの手法を採用したという。また、AIによるナレーションは、ウォーホル自身も喜びそうなこととしてドキュメンタリーの中で描かれている。

AIのウォーホルは予告編で、「僕のロボットを作っているオフィスに顔を出してきた」と話す。これは、1982年に作られた、彼の顔を模したマスクを被せることのできるロボットのプロトタイプのことを言っている。

「アンディ・ウォーホル・ダイアリーズ」は、ウォーホルに関する大掛かりな制作物としては最新のもの。近年話題になった中には、2020年に出版されたブレイク・ゴプニックによる1000ページ近い伝記や、2018年にホイットニー美術館(ニューヨーク)で開催された回顧展(350点の作品を展示)がある。

「アンディ・ウォーホル・ダイアリーズ」では、ジョン・ウォーターズやグレン・リゴンなどのアーティスト、ラリー・ガゴシアンやジェフリー・ダイチなどのアートディーラー、ホイットニー美術館の回顧展を企画したキュレーターのドナ・デ・サルボのインタビューも盛り込まれている。

最近ヒットしたドキュメンタリーには、AIを活用したものが多い。昨年は、(2018年に亡くなった有名シェフの)アンソニー・ボーデインのドキュメンタリー「Road Runner(ロードランナー)」で本人の声がAIで再現され、三部構成の長編ドキュメンタリー「ザ・ビートルズ:Get Back」では、アルバム「レット・イット・ビー」の制作過程を記録した映像の再生にAIが使われた。

こうしたAIの使い方は、技術的にはすばらしいが、議論の的にもなっている。故人を生き返らせることの倫理性が問われるだけでなく、真実を語るというドキュメンタリーの本質が揺らぐという声も聞かれる。(翻訳:野澤朋代)

「アンディ・ウォーホル・ダイアリーズ」の予告編はこちら。

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年2月24日に掲載されました。元記事はこちら。

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