「ワンちゃん預かります」無料ドッグシッターサービスがイタリアの美術館でスタート。散歩や給餌も
1月12日、イタリアの美術館・博物館で無料のドッグシッターサービスが始まった。利便性向上による来館者増を目指したこのサービスは、今後イタリア国内の15都市にある主要美術館を巡回する。
イタリア全土の15の観光スポットを巡回する無料のドッグシッターサービスが開始された。同サービスを提供するのは、ドッグシッティングサービス会社のバウアドバイザー。観光スポットには、ローマの主要文化施設であるアラ・パチス博物館、イタリア国立21世紀美術館(MAXXI)、ヴィラ・ジュリア国立博物館、サンタンジェロ城の4文化施設も含まれ、これらの施設では初回の1月12日に40人の愛犬家が利用した。
同サービスは2026年4月までの期間、毎月1日ずつ実施される計画だ。利用者はオンライン予約により、希望する美術館の入口で熟練したトレーナーに愛犬を預けることができ、犬たちは飼い主が施設内を見てまわる間、散歩や給餌などの世話を受ける。
今後は、ヴェネチアのペギー・グッゲンハイム・コレクション(2月7日)、フィレンツェのウフィツィ美術館(9月7日)、ナポリの国立考古学博物館(10月5日)でもサービスが提供されるという。
プロジェクトの開始にあたり、バウアドバイザーのディレクター、ディノ・ガスペリーニは英タイムズ紙にこう強調した。
「このサービスを利用すれば、飼い主はペットと長時間離れ離れになることなく文化を楽しむことができ、犬も留守番のストレスから開放されます。つまり、双方の生活の質を高められるのです」
イタリアの調査会社、エウリスペスが2024年に発表したリポートでは、イタリアでペットを飼っている家庭は全体の約3分の1で、その半数が犬とされる。また、イタリアの国立統計局(ISTAT)は、昨年イタリア国民の3分の1が国内の美術館や博物館を訪れたというデータを明らかにしている。さらにガスペリーニによると、犬を飼っている人の半数はペットを家に残していきたくないという理由で美術館や博物館に行くのを見送っているという。
バウアドバイザーが初めて美術館で犬の一時預かりとシッティングサービスを提供したのは2年前。現在は約60都市、300の文化施設で、年間を通じ1時間10ユーロ(約1600円)の有料サービスを提供している。中でもロンバルディア州のマントヴァで人気があり、今では毎月約800人の愛犬家がサービスを利用してドゥカーレ宮殿やテ離宮博物館などの観覧を楽しんでいる。
2010年代後半にダリオ・フランチェスキーニ文化相(当時)のアドバイザーを務めたこともあるバーリ大学のジュリアーノ・ヴォルペ考古学教授は、タイムズ紙にこう語った。
「美術館でのドッグシッターサービスは、人々がペットと芸術の二者択一をしなくてもよくなるという意味で好ましいことです」
このサービスがヨーロッパ全土で展開されるようになるかは未知数だ。たとえば、パリのルーブル美術館やロンドンのテートでは現在、盲導犬の入場のみ認められている。バウアドバイザーのガスペリーニはこう言った。
「犬が美術館に入ることを許可するべきですが、現状はそうなっていないので、私たちが解決策を見つけたというわけです」(翻訳:石井佳子)
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