蚤の市で購入した肖像画に、モディリアーニの真作鑑定。決め手は安価な画材や絵の裏の印章
イタリア人コレクターがフランスの蚤の市で手に入れた絵が、アメデオ・モディリアーニの真作であることが分かった。署名はないが、絵の裏に押された印章が鑑定調査のきっかけになったという。
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イタリアのローカル紙、コリエレ・アドリアティコの報道によると、起業家でコレクターのパオロ・グッツィーニが15年ほど前に蚤の市で購入した肖像画が、アメデオ・モディリアーニがキャリア初期に制作したものであることがわかった。肖像画に署名はなかったが、最近鑑定が行われ、ローマのモディリアーニ・アーカイブに登録された。
真作だと鑑定されるに至ったきっかけは、グッツィーニが肖像画の裏に特徴的な印章があるのに気づいたことだった。評論家のアルベルト・マッツァッケラのアドバイスを受けた彼は、この絵の来歴について調査を開始。問題の印章は、19世紀末にモンマルトルで芸術家たちがよく買い物をしていた店の印であることが明らかになった。
次にグッツィーニは、ローマのアメデオ・モディリアーニ財団に調査を依頼した。科学的分析の結果、モディリアーニのパリ時代初期と一致する特徴が複数発見されている。その1つは、当時の画家たちが節約のために使用した安価な白い絵の具だった。肖像画に描かれているのはモディリアーニの友人で、ヴェネチア出身のマリオ・カヴァリエリだと考えられている。
発見者のグッツィーニは真作発見の意義について、「今日におけるこの作品の価値は、市場価格だけでなく、特に歴史的な重要性にあります」と述べた。
ちなみに、2023年11月にサザビーズ・パリで行われた印象派とモダンアートのイブニングセールでは、これと似たモディリアーニの初期作品が40万ドル(直近の為替レートで約6100万円、以下同)を超える価格で落札されている。
このように、貴重な美術品が思いがけないところで見つかる事例は少なくない。今年初め、フィラデルフィア郊外のグレンサイドにあるリサイクルショップで見つかった水彩画は、19世紀に活躍した黒人画家ウィリアム・H・ドーシーによる唯一の現存作品であることが判明。10ドル(約1520円)で購入されたこの絵は、現在ペンシルベニア歴史協会に飾られている。
2023年には、ニューハンプシャー州マンチェスターのリサイクルショップで、N・C・ワイエス(アンドリュー・ワイエスの父)の油彩作品が見つかった。4ドル(約610円)で売られていたこの絵がオークションに出品されたときには、25万ドル(約3800万円)の予想最高落札価格が付けられていた。
しかし、全部が全部大当たりというわけにはいかない。ミネソタ州のガレージセールで50ドル(約7600円)で売られていた絵は、長い間行方不明になっていたフィンセント・ファン・ゴッホの肖像画《エリマール》だと考えられ、ニューヨークの美術鑑定会社LMIグループ・インターナショナルが、匿名のコレクターから2019年にこの絵を購入(金額は非公開)。専門家による調査の結果、この作品はゴッホの真作だとする458ページの報告書を発表したが、アムステルダムのゴッホ美術館はその判定を否定。LMIグループは美術館に「真作でない理由の説明」を求めている。(翻訳:石井佳子)
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