ミャンマー大地震による文化遺産への被害は壊滅的。タイの巨大涅槃仏も損傷

3月28日にミャンマーで発生した大地震により、仏教の礼拝所や僧院など、国内の文化遺産や宗教施設が甚大な被害を受けている。隣国タイでも被害が確認されており、バンコクのワット・ポー寺院にまつられている巨大な涅槃仏にも損害が及んだという。

地震の被害を受けたマンダレー王宮の前を通り過ぎる僧侶。Photo Sebastien Berger/AFP via Getty Images
地震の被害を受けたマンダレー王宮の前を通り過ぎる僧侶。Photo Sebastien Berger/AFP via Getty Images

3月28日に発生したマグニチュード7.7の地震とマグニチュード6.7の余震により、ミャンマー文化遺産が危機にさらされている。

アジアで最も貧しい国のひとつであるミャンマーは、2021年の軍事クーデターに端を発する内戦が現在も続いており、救援物資や正確な情報が入手しがたい状況が続いている。また、インフラが脆弱なため、大きな自然災害に対処するだけの能力を備えていないため、軍事政権を率いるミン・アウン・フラインは、世界各国に支援を求めている

地震による明確な死亡者数はまだ明らかになっていないが、米地質調査所(USGS)は28日、死者は推定1万人にのぼると発表した。また、USGSは「多数の死傷者と広範囲にわたる被害」を理由に、ミャンマーが危機的状況にあると警告を発令している

29日の朝の時点でミャンマー政府は、モスクや仏塔150棟を含む約3000棟の建物が被害を受け、400人近くが死亡したと報告した。インターネット上で出回っている画像は、すでに紛争の渦中にあって危険にさらされていた同国の文化遺産や宗教施設に、さらなる被害が及んだことを示している。

文化遺産への被害が最も深刻なのは、ミャンマー第2の都市であり、多くの古代の僧院や宮殿があるマンダレーとその周辺で、19世紀に建てられた歴史ある王宮の一部にも被害が及んでいる。ほかにも、王宮の壁に沿って建てられた大きなパゴダ(仏塔)が鋭角に外側に突き出し、壁の別の部分は完全に崩れ落ちている

また、マンダレーの南西に位置する200年の歴史をもつメ・ヌ・ブリック僧院は、壊滅的な被害を受けており、マンダレー南東にある仏教の重要な礼拝所であるシュエサーヤン・パゴダの仏塔も崩壊した

マンダレーの西側では、5階建てのマソーエイン僧院が崩壊し、そこに住んでいた数十人の僧侶がその夜に寝る場所を失い、近くの路上に敷いたマットに身を横たえていたとニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。また、震源地から110キロ離れた場所にあるピンダヤでは、いくつかの仏塔が倒壊し、周囲には仏塔の黄金の尖塔や無数の赤レンガが散らばっていたという。

一方、ミャンマーの首都ネピドーでは、AP通信が撮影した写真から、仏塔が倒壊した様子が確認できる

この地震を引き起こしたサガイン断層の近くには、世界三大仏教遺跡のひとつと称される、ユネスコ世界遺産のバガンがある。同遺跡にある11〜13世紀の建造物が無事かどうかは分かっていないが、バガンは2016年の大地震で大きな被害を受けている

今回の大地震は隣国タイにも被害を及ぼした。首都バンコクで建設中の高層ビルが崩壊し、4月1日現在で11人が死亡し、76人が安否不明となっている。

ワールド・モニュメント財団(WMF)が同国での文化財の被害状況を調査したところ、バンコクのワット・ポー寺院にある有名な涅槃仏の一部が損傷したことが明らかになっているが、全体的な被害を把握するにはさらなる調査が必要だという。WMFは声明で、ミャンマーとタイの両国で被害の状況を収集し続けると発表している。

ミャンマーと国境を接する中国でも負傷者が報告されたが、文化遺産に重大な被害は無かったという。大地震から4日が経過したが、被害の全容は明らかになっていない。近隣の中国、タイ、マレーシア、ロシア、そして国連からは人員がいち早く派遣され、救助活動が行われている。(翻訳:編集部)

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