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アンバニ・ファミリー(Ambani Family)

拠点:インド・ムンバイ
職業:石油・ガス開発、バイオテクノロジー、繊維事業などのコングロマリット
収集分野:近現代アート

2023年3月、ムンバイにニタ・ムケシュ・アンバニ文化センター(NMACC)をオープンし、インドのアートシーンに旋風を巻き起こしたのがニタ・M・アンバニと娘のイシャ・アンバニ・ピラマルだ。ニタは当時の声明でこう述べている。「私たちは、映画や音楽、ダンスや演劇、文学や民俗学、芸術や工芸、科学や精神性など、インドの芸術的・文化的遺産を世界に広げる場を作りたいと考えました。この文化センターは、インドの最高のものを世界に紹介し、世界の最高のものをインドに迎え入れるためのスペースです」

NMACCのオープニングには、各界の大物たちが出席している。アート界からはジェフ・クーンズ、ミカリーン・トーマス、アレックス・イスラエル、ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)のマイケル・ゴーヴァン館長。エンタテインメント界からはゼンデイヤ、トム・ホランド、プリヤンカー・チョープラー、ペネロペ・クルス、ニック・ジョナス。そしてファッション界からはジジ・ハディッド、クリスチャン・ルブタン、プラバル・グルン、ロー・ローチなどだ。オープン時には、ファッションエディターのハミッシュ・ボウルズが企画した「India in Fashion」展と、著名ディーラーのジェフリー・ダイチと詩人で評論家のランジット・ホスコテがキュレーションを担当し、インド国内外の現代アーティストの作品を集めた「Sangam - Confluence」展を開催。同年7月には、アーティストのマウリツィオ・カテランとピエールパオロ・フェラーリが2010年から共同発行しているアートマガジン「TOILETPAPER」による展覧会、「RUN AS SLOW AS YOU CAN」が開かれている。

2019年にニタ・アンバニは、2016年から支援を続けているニューヨークのメトロポリタン美術館の名誉理事に任命された。彼女が資金援助を行った主な展覧会には、ナスリーン・モハメディとムリナリニ・ムカルジーの個展(それぞれ2016年と2019年)のほか、「Modernism on the Ganges: Raghubir Singh Photographs」(2017)や「Tree & Serpent: Early Buddhist Art in India, 200 BCE–400 CE」(2023)などのインドに関する企画展がある。また、2010年に設立されたリライアンス財団の会長でもあるニタは、健康、教育、都市再生、芸術文化など多様な分野で「インドの持続可能な発展を支える」ことに注力。さらに、ディルバイ・アンバニ・インターナショナル・スクールを設立したほか、2016年には国際オリンピック委員会の委員に選出された。

リライアンス財団は、フォーチュン500に名を連ねるインド最大級の企業、リライアンス・インダストリーズ社傘下の非営利団体だ。1955年にディルバイ・アンバニが起こした繊維会社から始まったリライアンス財閥は、エネルギー、小売、デジタルサービス分野などでビジネスを展開する多国籍コングロマリットへと成長。ニタの夫、ムケシュ・アンバニは現在、同社の会長兼マネージングディレクターを務めており、米フォーブス誌によると、2023年10月現在のアンバニの純資産は約914億ドル(約13兆3400億円)と推計されている(資産額は日々更新される)。リライアンス社はまた、インド・プレミアリーグで5度の優勝を誇るプロクリケットチーム、ムンバイ・インディアンスを所有している。


注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2024年版トップ200コレクターズが発表された2024年10月時点の為替レートによる。

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