マダガスカル王の頭蓋骨がまもなく祖国へ。フランス新法による返還の「歴史的」第1号

フランス政府は2023年に可決された人骨返還法に基づき、マダガスカル王と戦士の遺骨返還を進めてきた。そして4月2日に公布された政令で、いよいよ祖国に戻されることが決まった。

マダガスカルの首都アンタナナリボにある王宮ロバ。Photo: Wikimedia Commons

フランスのフランソワ・バイルー首相は4月2日に政令を公布し、マダガスカル王トゥエラとサカラヴァ族の戦士2人の頭蓋骨を同国に返還することを表明した。これは2023年12月にフランスで可決された人骨返還法に基づいた初めての人骨返還となる。

現在パリの自然史博物館に所蔵されている遺骨は、1897年8月に起こったフランスによるマダガスカル占領時の悲劇を物語っている。フランス軍は降伏交渉中だったマダガスカル王国に攻め入り、アンビキー村で数百人を虐殺。その後トゥエラ王とサカラヴァ族の指導者3人を殺し、頭部はパリに送られた。彼らの遺骨が埋葬されることなく博物館に置かれていることは子孫たちにとって辛い出来事であり、国を挙げて長年返還運動が行われてきた。

この決定は、2022年にマダガスカル政府からの正式要請を受けて二国間科学委員会が審査を行い実現した。植民地時代に持ち去られた人骨返還のためにフランス政府が設けた新しい法的枠組みの初適用であり、遅ればせながらではあるが、国が過去の歴史の中で行われた残虐行為を認めるものである。政令によると、自然史博物館は1年以内に頭蓋骨を返還しなければならない。

マダガスカル全土での巡回展を含める、遺骨返還を記念した儀式は8月に予定されている。当初はエマニュエル・マクロン大統領の訪問に合わせて4月に行われる予定だったが、王の子孫と部族の指導者たちがそのような時期に儀式を行うことを文化的に禁じていると反対したため、延期された。

その一方で、フランスのカトリーヌ・モラン=デサイイ上院議員は返還の決定を歓迎しつつ、さらなる法改正の必要性を強調した。2023年に制定された人骨返還法は、外国からの要請による返還のみを認めており、フランスの海外領土は適用外だ。彼女はまた、現在もフランスの公共コレクションに保管されている植民地時代の文化財の返還を規定する法律の推進も求めた。

デサイイが主張する事例がすでに浮上している。4月28日、フランス上院は元フランス領で1960年に独立後も軍事協定を結ぶコートジボワールへ伝統的な打楽器「トーキングドラム」の返還を認める法案を審議する予定だ。この太鼓は神聖なものとされ、かつて敵の襲撃を村に警告するために使用されていた。だが植民地時代にフランスに奪われ、現在も同国のコレクションとされている。(翻訳:編集部)

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