「最後のピースを返して!」ルーブル美術館にイタリアの村の教会が扉の石片の返還を要請

イタリアの小さな町にあるサン・ニコラ教会で修復中の扉の最後のピースがルーブル美術館に所蔵されているとして、自治体と教会は返還を求めている。

現在はルーブル美術館に所蔵されているサン・ニコラ教会の石片。Photo: Wikimedia Commons

イタリア・アブルッツォ州アヴェッツァーノ市にあるサン・ニコラ教会は、1915年の大地震によって破壊された扉の計7点の石片がルーブル美術館に所蔵されているとして、返還を求めている。Le Journal des Artsが伝えた。

13世紀に建設されたサン・ニコラ教会は、洗練されたデザインの彫刻を施した中世建築の貴重な用例として知られている。だが1915年に起きた大地震によって約3万人が犠牲となり、教会も崩壊。装飾された扉の上部の破片は回収されたが、そのうちの7片はナチスドイツがフランスを占領していた時代に流出し、デュッセルドルフの美術館に所蔵される予定だった。しかし、経緯がはっきりしないものの1983年にルーヴル美術館に収蔵され、現在は同館のドゥノン翼で展示されている。

アヴェッツァーノ市は、現在教会の扉を市庁舎で保管・修復している。ルーブル美術館にある7片が扉の最後のピースであり、これが戻ってくれば、同州の文化的アイデンティティの象徴である文化遺産の一部が再び蘇ることになる。完成した暁には、同市は地元の博物館に恒久展示したいと考えている。

ルーブル美術館のウェブサイトによると、この石片には「Musées Nationaux Récupération(国立美術館所蔵品回収、MNR)」のラベルが貼られている。これは、第2次世界大戦後に連合国軍が、ドイツまたはドイツが占領していた地域から略奪されたと推定したフランス国立美術館にある美術品を指しており、正式な所蔵品ではないという意味だ。

ここ数週間、アヴェッツァーノ市は、石片を取り戻そうと州政府当局や美術館との交渉を急いできた。イタリア文化省も、この石片をルーブル美術館が返還するよう支援しており、ローマ裁判所も返還を命じている。しかしルーブル美術館は現在、公式に返還請求がなされたことを否定しているという。

from ARTnews

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