マケドニア北部で古代都市を発見!? 最新のレーザー測量で劇場や織物工房が姿を現す

マケドニア北部のグラディシテ遺跡で、考古学者たちが古代リンケスティス王国の首都リュンコスを発見した可能性が高まっている。この発見は、アレクサンドロス大王の時代以前から栄えていた古代マケドニアの自治地域の姿を解明する重要な手がかりとなるかもしれない。

マケドニア北部にアルグラディシテ遺跡。2024年に撮影。Photo: Courtesy of Cal Poly Humboldt's Cultural Resources Facility
マケドニア北部にアルグラディシテ遺跡。2024年に撮影。Photo: Courtesy of Cal Poly Humboldt's Cultural Resources Facility

マケドニア北部にあるグラディシテ遺跡を調査していた考古学者たちが、古代リンケスティス王国の首都であったリュンコスの遺跡を発見した可能性がある。

リンケスティス王国は、アレクサンドロス3世の父であるピリッポス2世によって紀元前358年に征服されるまで、マケドニア北部の自治地域として存在していた。この地域は、マケドニア王アミントス3世の王妃で、アレクサンドロス3世の祖母であったエウリュディケが生まれた場所であると考えられている。

グラディシテ遺跡の調査は、マケドニア・ビトラにある研究所と博物館、そしてカリフォルニア州立ポリテクニック大学ハンボルト校が協力によって行われており、15年以上前に遺跡が発見されて以来、発掘調査が続けられてきた。

研究チームは当初、ローマの攻撃から住民を守るために建設された軍事前哨基地の遺跡を発見した。2023年には、地中レーダーと航空レーザー測量技術(LiDAR)が搭載されたドローンを使用してさらなる調査を実施。この調査により、およそ3ヘクタールの面積を誇るアクロポリス(古代ギリシャ都市の高台に建設された要塞区域)、マケドニア様式の劇場、そして織物工房を備えた広大な都市が姿を現したのだ。

また、石斧や陶器の破片が出土していることから、青銅器時代(紀元前3300〜1200年)にはリュンコスがすでに存在していたことが裏付けられる。さらに、紀元前325〜323年の間に鋳造された硬貨が発見されており、アレクサンドロス3世がこの地を治めていたと、研究チームは推測している。これら以外にも、粘土でできた観劇用のチケットやゲームの駒、織物用の道具といった日用品も出土している。カリフォルニア州立ポリテクニック大学ハンボルト校で文化人類学を研究するニック・アンジェロフは今回の発見に際して次のような声明を発表した

「分裂した古代マケドニアの王国と、それぞれの権力構造の解明につながる今回の発見は極めて重要です。特に、リュンコスはコンスタンティノープルへの交易路沿いに位置していたので、その重要性は明白でしょう。もしかすると、アクティウムの海戦でクレオパトラとマルクス・アントニウスと対峙するために、オクタヴィアヌスやアグリッパといった歴史上の人物がこの地域を通過したかもしれません」

考古学者は、グラディシテ遺跡の調査を続けている。新たに発見された古代都市は、古代マケドニア王国がヨーロッパで初めて築かれた国家のひとつとしてどのように発展してきたのか、さらなる洞察をもたらすに違いない。(翻訳:編集部)

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