時計製造という芸術に迫る体験型展覧会が開催。ヴァシュロン・コンスタンタン、270年の探求

高級時計メゾン「ヴァシュロン・コンスタンタン」が創業270周年を記念し、体験型展覧会「The Quest(探求): 270年にわたる卓越性への追求」を2025年4月26日より東京・神宮前で開催する。時計製造の核心に迫る同展では、メゾンの史料や歴史的タイムピース、ムーブメントを展示するほか、美と自己の探求を促す茶人・陶芸家の山田翔太による作品も期間限定で展示される。

Vacheron Constantin Omotesando pop-up
ヴァシュロン・コンスタンタン「The Quest(探求): 270年にわたる卓越性への追求」展の最後の展示室「The Quest(探求)」では、時計製造の「宇宙」が感じられる美しい天体の映像作品を鑑賞できるほか、楽しい仕掛けも。

「できる限り最善を尽くす、そう試みることは少なくとも可能である(Do better if possible and that is always possible)」

1819年に共同創業者の一人であるフランソワ・コンスタンタンが共同経営者のジャック=バルテルミー・ヴァシュロンに宛てたこの言葉を精神的支柱として、270年にわたって革新への飽くなき探求を続けてきた歴史的な時計メゾン「ヴァシュロン・コンスタンタン」が、世界巡回展「The Quest(探求): 270年にわたる卓越性への追求」を2025年4月26日から東京・神宮前で開催する。

2025年2月のアブダビを皮切りに世界各地を巡回する同展は、創業者ジャン=マルク・ヴァシュロンが1755年に最初の見習いと結んだ契約書の複製をはじめとする記念碑的な史料や、同メゾンのたゆまぬ探求を象徴する歴史的なタイムピース、さらにメゾンが継承してきた伝統的な工芸技術などを紹介する旅を通じて、数々の世界初や新記録を打ち立ててきたヴァシュロン・コンスタンタンの270年にわたる歴史を紐解く体験型展覧会だ。

目に見えない「卓越性の核心」に迫る

本展では、主に4つのセクション──時計製造のはじまり、工芸技術と仕上げ、時計製造とグランド・コンプリケーション、そして探求──を通じて、メゾンの本質が解き明かされる。

エナメル、彫金、ジェムッティング、ギヨシェ装飾など、工芸技術に焦点を当てたセクションでは、狂気的なまでに高度かつ精緻な技術に裏打ちされたヴァシュロン・コンスタンタンの芸術性に触れることができる。

会場でまず来場者を迎え入れるのは、メゾンの270年の歴史を楽しく学ぶことのできるドラマティックな史料室のような空間。
史料室では、創業年である1755年に、創業者ジャン=マルク・ヴァシュロンが最初の見習いと結んだ契約書の複製も展示されている。
展示室には、メゾンの270年の軌跡において重要な意味を持つ貴重なアーカイブピースも。
「工芸技術と仕上げ」の展示室では、エナメル、彫金、ジェムッティング、ギヨシェ装飾など、メゾンの卓越した技術を知ることができる。
「工芸技術と仕上げ」の展示室に展示されたエナメル技術のサンプル。わずか30〜40mmほどの空間に実現された美しく深遠な世界観に圧倒される。
2024年発表の「レ・キャビノティエ・ザ・バークレー・グランドコンプリケーション」に搭載された63の複雑機能を視覚的に解き明かす「時計製造とグランド・コンプリケーション」の展示室。

また、ヴァシュロン・コンスタンタンが製作した最も複雑なムーブメントが紹介される「時計製造とグランド・コンプリケーション」の展示室では、2024年に発表され、63の複雑機能を搭載した「レ・キャビノティエ・ザ・バークレー・グランドコンプリケーション」の特別なディスプレイにより、裸眼では見えない繊細な部品の美しさを余すところなく堪能できる。メゾンが長年培ってきた機械式時計の複雑機構への探求と、東洋と西洋の時間概念の融合を見事に体現した同作品の裏側を見ることができる、時計愛好家にとっても貴重な機会だ。

展覧会を締めくくる「The Quest(探求)」の展示室では、宇宙と時の計測、そして無限の可能性を表現した天の川と遥かなる空の荘厳な眺めのもと、天体への探求心と時の測定という人類の永遠のテーマが考察される。天文学的な現象を手首の上で再現するという不可能を可能にしてきた同メゾンの職人たちのロマンあふれる野心と挑戦心に圧倒される体験になるだろう。

陶芸家・茶人の山田翔太の特別展示も

また、展覧会会場に隣接する"StandBy"では、4月26日から5月7日まで、陶芸家で茶人の山田翔太の作品展示も行われる。10代で陶芸と出合い、独学で制作をはじめた山田は、江戸時代初期の大名で茶人、作庭家としても知られる小堀遠州(こぼりえんしゅう)を祖とする茶道流派、遠州茶道宗家の直門で準師範「宗道」を拝受。遠州茶道の伝統を受け継ぎながらも、「誰かの正解ではなく、あなたの”みたて”をひらく」という理念のもと、絶景の中での野点茶会など従来の茶室に囚われない場所での茶会なども多く開催してきた。自身が制作する陶芸作品においても、無為自然をテーマに、自然の偶発性や人の手わざによる歪みなど、完璧ではない「わび」の美学を現代的に解釈した作風で伝統の境界を押し広げている。

隣接する「StandBy」は今回のために期間限定で茶室に変身。特別に制作された畳には、ヴァシュロン・コンスタンタンを象徴するマルタ十字が。

山田は今回のコラボレーションに際し、ヴァシュロン・コンスタンタンへの共感をこう説明する。

「五感を研ぎ澄まし、美しさの感性に触れる唯一無二の『みたて茶会』と私の陶芸のテーマは、ひたむきに時計作りに取り組んできたヴァシュロン・コンスタンタンの探求とつながるところがあります」

270年にわたる途方もない探求によって自らの未来を切り開いてきたヴァシュロン・コンスタンタン。どのように伝統を築き育み、それを守りながらも革新を繰り返してきたのか。今回の展示を通じて、その旅を追体験してみよう。

東京・神宮前に現れた「The Quest(探求): 270年にわたる卓越性への追求」展の会場。

The Quest(探求): 270年にわたる卓越性への追求
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-11-1 
営業時間:11:00~19:00(18:30最終入場) 
定休日:火曜日(祝日を除く)
入場料:無料(予約優先、来場規制あり) 
問い合わせ先:0120-63-1755 
※ 展示内容は予告なしに変更する可能性あり

Photos: Kunihisa Kobayashi, Courtesy of Vacheron Constantin