「近年で最も重要な発見」と専門家も評価。アッシリア帝国の最盛期を伝える超巨大なレリーフを発掘

イラクの古代都市ニネヴェで、アッシリア帝国の黄金期最後の王アシュルバニパルの巨大なレリーフが見つかった。発掘チームによると、これは近年で最も重要な発見の1つだという。

ハイデルベルク大学の研究チームによる発掘調査の様子。Photo: © Aaron Schmitt

イラク北部の都市モスルに近い古代都市ニネヴェで、ドイツ・ハイデルベルク大学の考古学者チームが、アッシリア帝国の黄金期最後の王と2柱の神々を描いた巨大レリーフを発見した。

ハイデルベルク大学のチームは、ハイデルベルク・ニネヴェプロジェクトの一環として、2018年からニネヴェで発掘調査を行っている。同大学の発表によると、アッシリア帝国黄金期の最後の王アシュルバニパル(在位期間:紀元前669~631)が建てた北宮殿の中心部にあるクユンジク塚を発掘していたところレリーフを見つけたという。同遺跡では少なくとも19世紀末から考古学的調査が行われており、イギリスの研究者たちも北宮殿内でレリーフ群を発見。それらは現在大英博物館に収蔵されている。

今回見つかったレリーフは幅5.5メートル、高さ3メートル、重さ約12トン。アシュルバニパル王が神のアシュルと、ニネヴェの守護女神イシュタルによる神聖な会談の場面が描かれている。彼らの背後には、神々と君主に救済と長寿を与えるとされる「魚の精霊」として知られる神話的存在が配置されている。

ハイデルベルク大学、先史・原史・古代近東考古学研究所の教授であるアーロン・シュミットは、今回の発見はこれまでの発掘調査の中で最も重要なものだと説明し、「私たちが知るアッシリア宮殿の多くのレリーフの中で、代表的な神々の描写は見られませんでした」とその希少さを強調。さらに、レリーフの上には神々の保護と王権の象徴として広く用いられていた、巨大な翼のある太陽円盤が描かれていたと推測した。

アッシリア帝国は、メソポタミア・エジプトにまたがるオリエント全域を最初に統一した。その中心都市ニネヴェは紀元前700年頃、センナケリブ王の下で古代世界における最も影響力ある文化首都の一つとして確立され、楔形文字などの高度な文明を築いたが、領内の諸民族の抵抗により、紀元前612年に滅亡した。ニネヴェはその後、古代世界における力を取り戻すことはなかったが、現代の芸術と科学の礎を築いたと評価されている。シュミットによると、このレリーフは今後数ヶ月に渡ってさらなる調査が行われるという。(翻訳:編集部)

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