WeTransferにアート業界も強い反発。批判を受け、AI訓練を目的としたコンテンツ使用条項を削除
ファイル転送サービスを提供するWeTransferが、ユーザーがアップロードしたコンテンツがAI訓練に活用される旨を利用規約に記したところ、非難の声が多く上がった。一部からは機密保持契約に抵触する懸念を示す声が上がり、同社は規約の一部を削除することになった。

ファイル転送サービスを提供する企業、WeTransferは、8月8日から適用予定だった利用規約に対してユーザーから批判を受け、知的財産権と機械学習モデルに関する条項を削除した。同社のサービスはアート業界において、作品画像や展覧会、アートフェアのリリース資料を送信するために使われている。
削除前の条項では、ユーザーが送信したコンテンツを人工知能(AI)の訓練に使用し、転送されたコンテンツを基に派生物を作成することが可能とされていた。さらに、WeTransferはそうした派生物を収益化できる一方で、ユーザーには報酬が支払われない仕組みだった。
Bye forever, WeTransfer.
— Rami Ismail (رامي) (@ramiismail.com) 2025年7月15日 8:57
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ポストプロダクション業界で働くアシュリー・リンチは、削除前の利用規約が適用された場合、クライアントとの機密保持契約に抵触するとBlueskyに投稿した。
「私たちポストプロダクション業界の人間は、素材のやり取りにWeTransferのようなツールを使っています。でも、こうした企業は、私たちがクライアントと結んでいる機密保持契約に抵触しかねない規約を設けていることに無自覚、もしくは無関心なように見えます。その結果、契約上WeTransferを使うことができなくなってしまいます」
WeTransferは2009年に創業し、イタリアのテック企業、Bending Spoonsに2024年に買収された。
「当社のサービスを通じて共有されるコンテンツには、機械学習やAIは一切使用していません」と同社の広報担当者はUS版ARTnewsに語り、次のように続けた。
「問題となった条項はもともと、コンテンツモデレーションの精度向上や、違法・有害コンテンツの拡散防止にAIを活用する可能性を示すために追加されたものでした。アップロードされたコンテンツが機械学習モデルなどの訓練に利用されることはありませんが、結果的に、追記された規約はユーザーに混乱を与えることになってしまいました」
その後同社は、7月15日に権利付与に関する利用規約を以下の通りに更新している。
「当社が提供するサービスと技術を改善し、ユーザー体験を高めるために、知的財産権の対象となるコンテンツに関する特定の権利を取得する必要があります。ユーザーは当社のプライバシー・クッキーポリシーに従って、サービスの継続的な運営、開発、改善のためにアップロードされたコンテンツを無償で使用する権利を当社に付与するものとします」(翻訳:編集部)
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