死者への「献酒」も。古代ローマの火葬墓が大量に出土、埋葬や祭祀に関する貴重な発見
南フランスにある古代ローマ時代の遺跡から、160基を超える火葬墓が見つかった。西暦1〜3世紀当時の埋葬や死者祭祀に関する新たな知見をもたらすものとして注目されている。

かつて交易と温泉で栄えた南フランスの都市、オルビアの遺跡で、古代ローマの大規模な火葬墓地が発掘された。考古学研究者たちは、ローマ時代の多様な埋葬法や慣習を明らかにする貴重な発見と見ている。
紀元前49年のユリウス・カエサルによるマルセイユ占領後、そこから80キロほど南東にあるオルビアは、西暦1世紀から3世紀にかけてローマの支配下にあった。今回発見された160基以上の火葬墓はこの時代にさかのぼるもので、火葬や酒類などの供物を供えた方法が明らかになったとライブサイエンス誌が伝えている。
フランス国立予防考古学研究所(Inrap)の発表によると、遺体は四角い穴の上に設置された木製の台に置かれ、火葬の際に「熱で台が崩れ、骨は白く変色してねじれ、ひび割れていた。副葬品のガラス製品は溶け、青銅器は歪み、煤で汚れた陶器もあった」という。
また、これらの火葬墓には「献酒管」が存在したことも分かった。これは、死者を祭る日に供物を捧げるためのもので、Inrapによれば、「オルビアの墓の特徴は、そのほとんどに液体の供物(ワイン、ビール、蜂蜜酒)を捧げるための導管が備わっている点にある。これは故人を偲び、あるいは死者を守護するためのものだった」とされている。
この導管は、ワインや油などの貯蔵に使われた陶器のアンフォラを再利用して作られており、フェラリア祭(2月21日)やレムリア祭(5月9日、11日、13日)など、古代ローマにおける死者のための祭日に行われた儀式に用いられていた可能性があると考えられている。(翻訳: 石井佳子)
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