10年ぶりの中国帰国をアイ・ウェイウェイが語る──「切断されていた電話が突然つながった」
中国政府を厳しく批判してきたアーティスト、アイ・ウェイウェイが、2015年以来約10年ぶりに母国に帰国した。アイはこの体験を、「10年間切断されていた電話が突然繋がり直したような感覚」と表現している。
中国人アーティストのアイ・ウェイウェイが、約10年にわたるヨーロッパでの事実上の亡命生活を経て、先月北京への里帰りを果たした。
作品や発言を通して中国の権威主義体制とその文化的影響──検閲、警察による暴力、法的手続きを伴わない拘束──を厳しく批判してきたアイを、中国政府は長年にわたってマークしてきた。そして2011年、当局はアイを脱税容疑で81日間拘束し、その後およそ4年間にわたって自宅軟禁状態に置いてきた。そして2015年、アイは没収されていたパスポートが返還されると中国を離れ、以後はドイツ、イギリス、ポルトガルで生活してきた。
今回の帰国について、アイはCNNの取材に対し、北京の空港で入国前に約2時間「検査と尋問」を受けたと語っている。ただし、質問内容は滞在期間や訪問先など、ごく単純なものだったという。CNNはこうした中国政府の対応について、アイの名前や作品は中国のSNS上で長年検閲されてきたため若い世代にはほとんど認知されていない可能性や、高度化した監視体制への自信、さらには彼を拘束・入国拒否した場合に生じうる国際的な反発を当局が考慮したのではないかと指摘している。
その後アイは、3週間の滞在中に撮影した写真や動画をインスタグラムで公開し、17歳の息子や93歳の母親と再会したことも明かした。
久しぶりの帰国について、アイはCNNに次のように語っている。
「10年間切断されていた電話が突然繋がり直したような感覚でした。口調やリズム、スピードが、全て以前の状態に戻ったのです。私が海外生活で最も恋しかったのは、中国語を話すことでした。移民としての最大の喪失は、財産や孤独、慣れない生活様式ではなく、言語的な交流なのです」
今回アイは無事に帰国を果たしたが、中国における「越えてはならない一線」は常に曖昧で、変化も早いとCNNは報じている。実際、別の著名な中国人アーティストであるガオ兄弟(高氏兄弟)のガオ・ジェンは、2024年6月に家族訪問のため中国へ帰国したものの、10年以上前に制作した毛沢東批判の彫刻を理由に、アメリカへ戻る直前に拘束された。
アイはヨーロッパに拠点を置きながら、武漢での新型コロナウイルス初動対応を扱ったドキュメンタリー《Coronation》(2020)や、香港民主化デモを描いた《Cockroach》(同)など、中国国家を批判する作品を制作し続けてきた。一方で、世界的な難民問題や、近年ではウクライナ戦争といった目の前の現実を主題とする作品にも力を注いでいる。(翻訳:編集部)
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