アイ・ウェイウェイがウクライナ兵士らを訪問。9月にはキーウで新作発表を予定

停戦に向けたウクライナロシアによる直接会談の調整が進む一方で、ロシアの攻撃は止んでいない。そんな中、アイ・ウェイウェイが、ウクライナ東部のハルキウを訪れ、前線の兵士などと交流した。アイは9月にキーウでの新作発表を控えている。

ロンドンで新作を発表した際のアイ・ウェイウェイ(2024年1月11日撮影)。Photo Leon Neal/Getty Images

9月にキーウで新作の大規模なインスタレーションを発表するアイ・ウェイウェイが、ロシア軍の砲撃が常態化しているウクライナ東部の都市、ハルキウを訪問。現地でロシアの侵攻に対峙する兵士や詩人、文化人たちと交流した。

アイがインスタグラムに投稿したキャプションなしの画像や短い動画には、風になびくウクライナの国旗、塹壕の兵士たち、ひまわり畑、崩れたロシア構成主義の建物、そしてウクライナ生まれの画家イリヤ・レーピンが19世紀に描いた《ザポロージャ・コサックの返書》のジグソーパズルなどが写っている。

さらには、ウクライナ軍のハルティア旅団のユニフォーム姿で撮影されたアイの写真もある。前線の戦闘員の中には、詩人で作家のセルヒー・ジャダンや、反体制活動家でプッシー・ライオットのスポークスパーソンとしても知られ、ロシア政府からテロリスト指定されているピョートル・ベルジロフなどの義勇兵が含まれている。

アイ・ウェイ・ウェイのインスタグラムに投稿されたハルキウ訪問の様子。

「私は、彼らの生活がいかに困難であるかを目の当たりにしました……しかし、その決意は驚くほど固いものでした」

アイはアートニュースペーパー紙にこう語り、いかなる交渉も、ロシアの占領下で生きることを望まないウクライナ人の運命を決めることはできないと付け加えた。迷彩服に身を包んだアイの動画を撮影したベルジロフは、最前線に現れた彼を「現代の最高のアーティスト」と称えている。

アイのハルキウ訪問は、ロシアによる新たな攻撃と時期が重なった。アラスカでトランプ大統領とプーチン大統領が会談し、ウクライナを含めた三者会談の開催に向けて前進が見られたとされた後もロシアの攻撃は続いている。また、ゼレンスキー大統領と欧州各国の首脳がホワイトハウスでトランプ大統領と会談する数時間前にも、ハルキウとザポリージャへの空爆で少なくとも14人が死亡した。

首都キーウでは、9月14日から11月30日まで、ウクライナの芸術を支援する非営利団体リボン・インターナショナルが委託したアイの新作が展示される。会場は旧ソ連時代の建造物を利用したスペース、パビリオン13で、作品のタイトルは《完全に調和のとれた三つの球体と白く塗られた迷彩服》(2025)。レオナルド・ダ・ヴィンチの数学的図解に着想を得たシリーズ作品に基づくこの新作を、アイは「合理性と非合理性に関する対話」と表現している。(翻訳:石井佳子)

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