「最悪のシナリオ」を回避──爆破窃盗により奪われたルーマニア至宝、無事回収
2025年1月にオランダの美術館から盗まれたルーマニア国立歴史博物館の至宝「コトフェネシュティの兜」が、無事回収された。
2025年1月、オランダの美術館で窃盗犯が自家製の花火爆弾とハンマーを使って扉を爆破して侵入し、ルーマニア国立歴史博物館が所蔵する至宝のひとつである金製のコトフェネシュティの兜(紀元前5〜4世紀)を奪う事件が発生した。監視カメラの映像には、犯人らがバールで美術館の扉をこじ開け、その後に爆発が起きる様子が記録されていた。この大胆な犯行に、ルーマニアの文化人や歴史家、そしてオランダの美術館関係者は衝撃を受けた。
しかし4月2日、アッセンで開かれた記者会見で、目出し帽を着用した重武装の警察官が警護する中、検察当局はこの兜が返還されたことを明らかにした。あわせて盗まれていた紀元前1世紀後半にさかのぼる金製の腕輪3点のうち2点も回収されたという。
検察当局のコリエン・ファーナーはABCニュースの報道を通じて記者団に「私たちはこの上なく喜んでいます」と語り、「まさにジェットコースターのような出来事でした。とりわけルーマニアにとって、そしてドレンツ美術館の職員にとっても」と続けた。
コトフェネシュティの兜は約2500年前のもので、現在のルーマニア一帯に栄えた古代民族、ダキア人に由来する。ルーマニア国立歴史博物館から6カ月間の貸与を受け、オランダの都市アッセンにあるドレンツ美術館で開催されていた展覧会「Dacia: Kingdom of Gold and Silver」に出品されていたが、展示の最終週末に盗まれた。国際的な見出しを飾ったこの窃盗事件について、当時ドレンツ美術館の館長だったハリー・トゥパンはAP通信に対し、「美術館にとって暗黒の日」と語っていた。ABC Newsによれば、事件から数日以内に3人が逮捕されている。
また、当時ルーマニア国立歴史博物館の館長だったエルネスト・オーバーランダー=タルノヴェアヌは、AP通信の取材に対し、「どれほど悲観的に考えても起こり得るとは信じられなかった強奪だ」と述べていた。
オランダの美術探偵アーサー・ブランドは、この遺物の行方について最悪の可能性を指摘していた。これほど著名な作品は売却不可能であるため、犯人たちは金目当てに溶解するつもりだっただろう、というのだ。当時、金の価格は1キログラムあたり約8万9000ドル(最新の為替レートで、約1400万円)で、これは兜の重量とほぼ同程度だった。
ドレンツ美術館の現館長ロベルト・ファン・ラングは、兜の回収を発表する声明の中で詩的な言葉を寄せている。
「コトフェネシュティの黄金の兜には、ご覧のとおり二つの目が描かれています。それは装着者と兜そのものを、邪視と不運から守るためのものです。それらは何世紀にもわたってその役割を果たしてきました。今日においても、その力を証明しているように思われます」
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