ゼレンスキー政権、ビエンナーレ・ロシア館関係者5人に制裁──「ロシアのプロパガンダ拡散に関与」

5月9日に開幕する第61回ヴェネチア・ビエンナーレを前に、ウクライナゼレンスキー大統領はロシア館関係者5人に対する制裁を発動した。国際芸術祭へのロシア参加をめぐる緊張がさらに高まっている。

ヴェネチア・ビエンナーレのロシア館。2022年撮影。Photo: Vincenzo Pinto/AFP via Getty Images

第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展へのロシアの参加をめぐり、ウクライナヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は4月10日、ロシア館関係者5人に対する制裁を発動する大統領令に署名したと発表した

制裁対象には、ロシア館のコミッショナーを務めるアナスタシア・カルネーエワが含まれる。2021年のヴェネチア・ビエンナーレ以来の続投となるカルネーエワは、元FSB(ロシア連邦保安庁)将軍であり、国営防衛企業ロステクの副社長を務めるニコライ・ヴォロブイェフの娘だという。また、ロシア政府の国際文化交流担当特別代表で元文化相のミハイル・シュヴィドコイも制裁対象に指定された。シュヴィドコイはこれまで、ロシアのウクライナ侵攻を支持する発言を行っている。

今回のロシア館は「木は空に根を下ろす(The tree is rooted in the sky)」をテーマに、「政治は一時的な次元に存在するのに対し、文化は永遠の中で対話する」というコンセプトのもと、アルゼンチン、ブラジル、マリ、メキシコなどから50人以上の若手音楽家、詩人、哲学者が参加する予定。今回の制裁対象には、参加者であるイントラーダ・アンサンブルのメンバーから、ヴァイオリニストのヴァレリア・オレイニク、歌手のイリヤ・タタコフ、ヴォーカリストのアルチョム・ニコラエフの3人も含まれている。同アンサンブルの他の7人のメンバーは対象外だ。

ウクライナ政府の声明によると、オレイニクは2014年のロシアによるクリミア併合以降、占領下のクリミアを繰り返し訪問しており、ニコラエフは2025年に同地で開催されたプロパガンダ・イベントに参加したとされる。またタタコフは、「ドネツク地域の一時占領地において『ロシア世界』の思想を広めるプロパガンダ映画の制作に関与した」と指摘されている。

ウクライナ政府は声明のなかで、制裁対象者について、「いずれも侵略国による第61回ヴェネチア・ビエンナーレへの参加に関与し、侵略を正当化するとともに、国際的なイベントにおいてロシアのプロパガンダを拡散する人物たち」と位置づけている。

一方、ビエンナーレ側は3月4日に発表した各国パビリオンの参加一覧において、「文化・芸術のいかなる排除や検閲にも反対する」との立場を示し、「ビエンナーレはヴェネチア市と同様に、対話と開放性、そして芸術的自由の場であり続け、人々と文化の結びつきを育みながら、紛争と苦しみの終結への揺るぎない希望を抱き続ける」と表明している。US版ARTnewsは今回の制裁についてビエンナーレにコメントを求めているが、現時点で回答は得られていない。

一方、シュヴィドコイは先月、US版ARTnewsの取材に対し、ビエンナーレ開幕前にいかなる制裁が課されてもロシア館は予定通り開催すると述べたうえで、次のように主張した

「様々な制裁が設けられ、西側の公的機関が我々と協力することを禁じられるかもしれません。ですが、ロシアから芸術的な自己表現の権利を奪うことは誰にもできないのです」(翻訳:編集部)

from ARTnews

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