「存在しない書体」が偽造発覚の決め手に──古代彫像の売却を図った男に有罪判決

サザビーズに持ち込まれた古代彫像の真贋をめぐり、FBIも参加した国際捜査が展開された。有罪判決の決め手となったのは、「1976年作成の書類」に使われていた書体だった。

押収された彫像のひとつ。Photo: Courtesy of Metropolitan Police
押収された彫像のひとつ。Photo: Courtesy of Metropolitan Police

サザビーズ・ロンドンに古代の彫像を売却しようとした男に、執行猶予付きの禁固刑が言い渡された。決め手となったのは彫像そのものではなく、1976年に作成されたとする請求書に使われていた書体だった。

ロンドン警視庁の発表によると、アンドリュー・クラウリーは2022年10月、3点のキクラデス像を売却するべく、サザビーズに鑑定を依頼した。像はいずれも高さおよそ30センチメートルで、現在のギリシャにあるキクラデス諸島で、少なくとも3000年前の青銅器時代に制作されたものだという。クラウリーは、アメリカで財を成し、引退後にイギリスへ移住した祖父からこれらの像を相続したと説明。来歴を裏づける書類として、古美術商のロゴが型押しされた1976年付の請求書を提出していた。

しかし、サザビーズの専門家は彫像と提出された書類に不自然な点を見つけ、同社の法務部門を通じてロンドン警視庁に通報。美術・古美術犯罪捜査班による捜査を経て、科学鑑定の結果、書類はタイプライターで作成されたものではなく、現代のプリンター技術で印字されていたことが判明した。

さらに捜査員はFBIの協力を得て、アメリカ在住の書体デザイナーを特定した。その結果、請求書に使われていた書体が、書類の日付から25年後にあたる2001年まで使われていなかったことが確認された。こうした鑑定結果を受け、クラウリーは2023年7月、サザビーズの専門家との面談に招かれ、メイフェアのニューボンド・ストリートにある同社前で逮捕された。警察は押収した像を現代の複製品と見ており、詐欺が発覚していなければ、最大50万ポンド(約1億円)で売却されていた可能性があるとしている。

クラウリーは罪を認め、執行猶予付き禁錮2年に加え、200時間の無償奉仕活動、そして訴訟費用1630ポンド(約35万円)の負担を命じられた。捜査を率いたロンドン警視庁のレイ・スワンは、今回の事件について「ロンドンのアート市場への被害を未然に防いだ、国境を越えた協力の好例」と述べ、サザビーズの迅速な対応が重要な役割を果たしたと語っている。

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