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バンクシーが商標権侵害訴訟で勝訴。自身の匿名性を守る

バンクシーの代表的モチーフである猿の絵の商標権登録に対する訴訟に、ついに終止符が打たれた。

banksy, バンクシー
バンクシー《Laugh Now But One Day We'll Be In Charge》(2002)。Photo: COURTESY CHRISTIE'S

1116日、欧州連合(EU)の審判部は、バンクシーが取得していたこの猿の絵の欧州商標は「全体として無効」とした欧州連合知的財産庁(EUIPO)の決定を覆したと、英『アートニュースペーパー』が報じた

この騒動は、グリーティングカード会社のフルカラーブラック社が201911月、バンクシーの猿の絵の商標は「悪意を持って」申請されたものであり、作品は特徴的でないとして、公式に異議を唱えたことから始まった。2008年からバンクシー作品の認証を管理している機関、ペストコントロールは、2018年にこの画像の商標を申請し、翌年6月に商標登録されている。

今回の勝利の最も重要な点は、バンクシーがこれまで通りミステリアスな存在でいられるということだろう。バンクシーの《Flower Thrower(花束を投げる男)》の著作権をめぐる過去の論争では、「バンクシーが正体不明であり、自身のグラフィティの『確かな所有者』として身元を確認できなければ、『バンクシーがその著作権の保有者であることを立証できない』」と判断された。

「これはバンクシー、より正確には、バンクシーの正体を隠すことを可能にしているペストコントロールにとって重要な勝利だ」と、HGF法律事務所の商標弁理士、リー・カーティスはアートニュースペーパー紙に語っている。「バンクシーが2度にわたって、『著作権は敗者のものだ』と言ったのはおそらく事実だが、バンクシーの商標登録の有効性には影響しないはずだ」

フルカラーブラック社のの代理人であるブランズミス法律事務所の商標弁理士、アーロン・ウッドは、同社の訴えは、ペストコントロールが使用の意図なく商標を申請したという主張にもとづくものだった。

バンクシーの猿は、2002年にブライトンのナイトクラブの壁に初めて描かれた。猿の首には「Laugh now, but one day we'll be in charge(今は笑うがいい、しかしいつか私たちが取り仕切る時がくる)」と書かれたサンドイッチボードがかけられており、このイメージはその後もバンクシー作品に度々登場していた。そのうちの1点は、20216月にロンドンで開催されたサザビーズのモダン&コンテンポラリーアート・イブニングセールにて290万ドル(現在の為替で約4億円)で落札されている。(翻訳:権名津美侑)

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