フランク・ロイド・ライト設計の名住宅、2億6000万円で売りに──「圧縮と解放」の思想を体現

フランク・ロイド・ライト(1867-1959)が手がけたテネシー州唯一の住宅「シーモア&ガート・シェイヴィン邸」が、オーナー一族によって初めて売りに出された。価格は160万ドル(約2億6000万円)。

シーモア&ガート・シェイヴィン邸の外観。Photo: Courtesy of Alliance Sotheby’s International Realty

フランク・ロイド・ライトが手がけたテネシー州唯一の住宅「シーモア&ガート・シェイヴィン邸」が売りに出されている。アートネットが伝えた。

1948年、シーモアとガートのシェイヴィン夫妻は、「テネシー州に建てる自宅のために、優れた建築家を紹介してほしい」とライトへ手紙を送った。夫妻の親族がニューヨークで暮らす家はライトの弟子が設計したもので、そのようなモダニズム建築家を紹介してもらいたいと考えていた。しかし、返ってきた返事は意外なものだった。ライトは、自ら設計を引き受けると申し出たのだ。

こうして4年後に完成した延床面積約167平方メートルの平屋建て、3ベッドルームの住宅は、ライトの思想を体現した一棟となった。ライトは1930年代後半から1950年代にかけて、手頃な価格で民主的なアメリカ住宅のあり方を追求し、「ユーソニアン住宅」と呼ばれる様式を確立した。シェイヴィン邸には、カンチレバー(片持ち梁)構造の屋根や正面から隠された玄関など、その特徴が随所に見られる。また、木材パネル張りの狭い廊下から開放的なリビングへと一気に視界が開ける構成は、あえて狭い空間を通過させることで、その先の広がりをより印象的に感じさせる「圧縮と解放」の設計思想を体現している。

シーモア&ガート・シェイヴィン邸内部の様子。Photo: Courtesy of Alliance Sotheby’s International Realty
シーモア&ガート・シェイヴィン邸内部の様子。Photo: Courtesy of Alliance Sotheby’s International Realty
シーモア&ガート・シェイヴィン邸内部の様子。Photo: Courtesy of Alliance Sotheby’s International Realty
シーモア&ガート・シェイヴィン邸内部の様子。Photo: Courtesy of Alliance Sotheby’s International Realty
シーモア&ガート・シェイヴィン邸内部の様子。Photo: Courtesy of Alliance Sotheby’s International Realty
シーモア&ガート・シェイヴィン邸の外観。Photo: Courtesy of Alliance Sotheby’s International Realty

当時すでに高齢だったライトは、この敷地を一度も訪れることはなかった。それでも、テネシー産の砂岩「チャード・ストーン」やルイジアナ産のイトスギなど、地域の素材を厳選して採用した。採光にも配慮し、全面ガラス張りの壁に加え、目線より高い位置に帯状にクリアストーリー窓を設け、室内に豊かな自然光を取り込んだ。さらにライトは、建築デザインと一体化した造り付け家具、屋根付きのカーポート、リビングの中央に据えた大きな石造りの暖炉など、自身の特徴的な意匠を随所に盛り込んだ。夫妻が当時支払った建築費(家具込み)は、現在の価値に換算すると約44万5000ドル(約7200万円)だった。

シェイヴィン邸は1993年に米国国家歴史登録財に登録され、2年後には邸宅があるチャタヌーガで唯一の歴史的ランドマークに指定された。シェイヴィン家は72年にわたってこの住宅を守り続けてきたが、今回、娘のカレン・シェイヴィンによって初めて売りに出された。仲介を担当するのはアライアンス・サザビーズ・インターナショナル・リアルティで、価格は160万ドル(約2億6000万円)。

カレン・シェイヴィンはArchitecturaldigestの取材で同邸について、「母はいつも、この家の良さは実際に時間を過ごしてみないと分からない、と言っていました。私自身、ここに来るたびに新しい美しさを発見するんです」と語った。

アライアンス・サザビーズ・インターナショナル・リアルティは物件紹介のなかで、シェイヴィン邸を所有できることは「一生に一度の機会」だとしたうえで、「この家は、アメリカにおけるユーソニアン建築の最も優れた実例のひとつであり、職人技と革新、そして有機的デザインに対するライトの献身が結実した稀有な作品」と評している。

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