恐竜は子どもに「特別な食事」を与えていた? 歯の化石が示す養育行動の起源
恐竜は、子どものために食べるものを選び分けていたのかもしれない。アメリカの研究チームが、イェール大学ピーボディ博物館所蔵の恐竜化石を分析した研究から、幼体には成体よりも栄養価の高い柔らかな食物が与えられていた可能性が浮かび上がった。

アメリカ・オハイオ州立大学の研究チームが、米モンタナ州で発見された恐竜化石を調査した結果、恐竜の幼体は成体よりも栄養価の高い食物を与えられていた可能性が示された。科学ニュースサイトPhys.orgが報じている。
調査対象となったのは、イェール大学ピーボディ博物館に所蔵されている白亜紀後期(約7500万〜8000万年前)に生息していたカモノハシ竜の一種、マイアサウラ・ピーブルソルム(Maiasaura peeblesorum)の親子の化石だ。マイアサウラは大型の草食恐竜で、群れを形成し、高度な社会性を持っていたと考えられている。
研究チームは、親子それぞれの歯に残る摩耗パターンを精密に分析した。その結果、幼体の歯には「押しつぶし型」の摩耗が顕著に見られた一方、成体の歯には「せん断型」の摩耗が多く確認された。これは、成体が硬い植物を食べる一方で、幼体にはより柔らかい食物が与えられていたことを示唆している。
さらに研究者たちは、他の恐竜や、現生哺乳類の歯とも比較分析を行った。その結果、幼体のマイアサウラは果実のような低繊維で栄養価の高い食物を多く摂取していた一方、成体は繊維質が多く栄養価の低い硬い植物を主に食べていたと結論づけた。こうした栄養豊富な食事によって、幼体は生後1年目に急速な成長を遂げた可能性があるという。
論文の筆頭著者で、オハイオ州立大学の進化・生態・生物体生物学科のジョン・ハンター准教授は今回の結果について、「ひなに餌を与えようとする行動は非常に古いものです。今回の研究は、その起源が鳥類よりもはるか以前、恐竜の時代にまでさかのぼる可能性を示しています」と述べている。
一方で研究チームは、成体と幼体が完全に異なる食物を摂取していたわけではなく、親が半消化状態の食物を幼体に与えていた可能性も指摘している。また、現代の草食性トカゲのように、幼体自身が巣を離れて採食していた可能性も否定はできないとしている。
しかし、孵化直後の幼体は自力で移動することが難しかったと考えられ、少なくとも孵化後数週間は親からの給餌に依存していた可能性が高いとハンター准教授は説明する。そのため、幼体が完全に自力で採食していたという説については、可能性は低いとみられている。
今回の研究は、恐竜が持っていた高度な生物学的・社会的システムの理解を深める成果として注目されている。今後は、さらに幼い個体の歯に残る「マイクロウェア(歯の微細な摩耗痕)」を分析し、恐竜の胚や孵化直後の個体に関する新たな仮説の検証を進める予定だ。