本来の所有者を探せ! オルセー美術館が、ナチス略奪美術品の常設展示室を開設
パリのオルセー美術館が、第二次世界大戦中に略奪または強制売却された可能性のある作品13点を常設展示に加えた。同館はこうした作品を200点以上保有しており、定期的に展示作品を入れ替えながら、来歴調査と本来の所有者への返還を進めるという。
5月5日、パリのオルセー美術館は常設展示スペースに、ルノワールやドガの絵画、そしてロダンの彫刻が並ぶ一室「À qui appartiennent ces œuvres?(この作品の所有者は誰?)」を新設した。この展示スペースは、巨匠たちの作品を鑑賞するために作られたのではなく、本来の所有者を探し出すことを目的に作られた。
展示されている13点の作品は、第二次世界大戦中にフランスで盗まれた、または強制的な売却によって手放された225点の作品群の一部にあたる。これらは終戦時にドイツとオーストリアから回収され、半世紀にわたってオルセー美術館によって保管されてきた。政府で略奪文化財の返還を担当するダヴィッド・ジヴィーは、いずれ来歴が判明し、作品がこの展示スペースから外される日が来ることを期待していると、ニューヨーク・タイムズ紙に語った。

返還へ動き出すフランス
略奪美術品の返還が遅いと批判されてきたフランスだが、近年は制度面での対応も進めている。3年前には、ユダヤ人家族から奪われて公的コレクションに入った財産を、個別立法を経ずに返還できるようにする法律が制定された。さらに今年4月には、略奪美術品の返還を促進する法案が下院で可決されている。今回の展示に合わせ、世界ユダヤ人返還機構(WJRO)の会長ギデオン・テイラーは「作品を返還するというフランス政府の意思が強く現れている」と述べた。
第二次世界大戦の終結時、フランスでは略奪された、または所在不明になった美術品が約10万点にのぼると申告された。その後、連合軍の「記念碑・美術品・公文書保存計画」、通称モニュメンツ・メンによって国外で発見された6万点がフランスへ返還され、そのうち約4万5000点は1945年から1950年の間に元の所有者へ戻された。所有者が判明しなかった作品の多くはフランス政府によって売却され、残された約2200点は国立美術館に預けられた。1950年以降に返還された作品は200点に満たず、そのうち15点はオルセー美術館が所蔵していた。

返還が進みにくい背景には、来歴の確認そのものの難しさがある。オルセー美術館の彫刻部門キュレーター、フランソワ・ブランシュティエールによれば、略奪美術品と正規に取得された作品を見分けることは容易ではないという。さらに彼は、同館に預けられた作品の約9割は、ドイツまたはオーストリア国籍の人物によって、戦時下の混乱の中で取得されたものだとニューヨーク・タイムズ紙に語っている。
展示作品の中にはドガの模写も
展示作品の一つに、ドガがアドルフ・メンツェルの作品を模写した絵がある。学芸員によれば、この作品は、のちにアウシュヴィッツへ移送され殺害されたユダヤ人収集家フェルナン・オクセが所有していた。その後、クトーというフランス人によってパリのギャラリーに持ち込まれ、ドイツ・カールスルーエの美術館へ売却されたのち、1948年にフランスへ戻ったという。ただし、オクセの手を離れてからクトーに渡るまでの経緯は不明で、強制的な売却だったかどうかも確認されていないと、ブランシュティエールは述べている。
もう一点、セザンヌが繰り返し描いたサント・ヴィクトワール山を題材にした絵画は、1942年にヒルデブラント・グルリットへ売却された。グルリットは、ヒトラーがオーストリアに建設を計画していた「総統美術館」のために作品を買い集めた画商として知られる。ただし、この絵がフランスへ戻った際、当局が手元に残したのは、略奪品と疑ったからではなく、贋作の可能性を疑ったからだった。その後の調査では、贋作と判断する根拠は見つかっていない。現在、この作品は2枚のガラスパネルで挟むように展示されており、来館者は木製額の裏面に押された印章やラベルを見ることができる。それらは、研究者が作品の来歴をたどるための重要な手がかりとなっている。

前館長が残した構想
この構想を動かしたのは、オルセー美術館前館長のシルヴァン・アミックだった。アミックは、ナチス・ドイツへ持ち去られたフランス由来の作品に限らず、植民地時代にアフリカからフランスへ運ばれた作品も含め、略奪美術品の返還問題に広く関心を寄せていた。昨年急逝する前には、こうした「孤児となった作品」の一部を一般公開するプロジェクトを推進していた。
展示室の開設と、今後10年にわたる調査プロジェクトには、非営利団体アメリカン・フレンズ・オブ・ミュゼ・ドルセーから寄せられた100万ユーロ(約1億8500万円)の寄付が充てられた。戦後80年が過ぎ、当時を直接知る人が美術館を訪れる可能性は低くなっている。そのため、同館は展示作品を入れ替えながら公開を続けるとともに、新たなオンライン調査ツールも活用し、正当な所有者につながる手がかりを探していくという。