訃報:オルセー美術館シルヴァン・アミック館長が58歳で急逝。就任1年半足らず、大改装計画の途上

8月31日、パリオルセー美術館およびオランジュリー美術館の館長、シルヴァン・アミックが58歳で急逝した。アミックは昨年4月に2館の館長に就任したばかりで、施設の大改装などの諸計画に精力的に取り組んでいた。

シルヴァン・アミック Photo: Luc Castel/Getty Images

オルセー美術館館長のシルヴァン・アミックが、8月31日に南フランスのアヴィニョン近郊で死去した。享年58歳。前フランス文化相リマ・アブドゥル・マラックがニューヨーク・タイムズ紙に語ったところによると、死因は心不全だという。

パリルーブル美術館に次ぐ来館者数を誇るオルセーの館長就任後、まだ1年半も経っていないアミック急逝の報はフランス国内外に衝撃を与えている。

ルーブル美術館館長で、オルセーの元館長でもあるローランス・デカールは、ソーシャルメディアに投稿した声明で、アミックを「想像力に富み、開かれた文化を推進した」と称賛。エマニュエル・マクロン仏大統領も、アミックは「遺産と創造の間に存在する、私たちの文化の普遍的な解放の力を知っていた」とXにポストした。

1967年、セネガルのダカールでフランス人の両親のもとに生まれたアミックは、ガンビアの首都バンジュールで教師を務めた後、90年代後半にキュレーターに転身した。2000年から11年までは、18世紀から19世紀にかけて活躍したフランスの画家、フランソワ=グザヴィエ・ファーブルの膨大なコレクションで知られる南仏モンペリエのファーブル美術館に勤務。その後ルーアンに移り、ノルマンディー地方にある11の美術館を統括するルーアン美術館を立ち上げた。2022年から24年初めまでは、当時のフランス文化相、リマ・アブドゥル・マラックのアドバイザーを務めている。

昨年の館長就任後、アミックはダニエル・マルシェッソー・リサーチセンターの開設準備に着手。常設コレクションの展示替え計画を主導し、最近ではオルセーが所蔵する名品による巡回展の陣頭指揮も執っていた。この巡回展が6月に上海の浦東美術館で開幕するにあたってアミックは、同展が過去の遺産を生かすという彼の目標を象徴するものだと発言。歴史的作品は古めかしく堅苦しいものではないことを示すものだとし、アートメディアのSOUQUEEによるインタビューでこう語っている。

「先人たちがその芸術を残そうと多大な努力を払ったのだとしても、私たちは『このコンセプトは今でも通用するのか?』と自問する必要があります。つまり私たちの仕事は、今日の問題を反映させながら美術館を可能な限り『同時代的』なものにすることであり、コレクションや美術史、そして特定の時代の歴史が、現代の私たちが世界を理解し、インスピレーションを得るための重要なリソースであると示すことなのです」(翻訳:石井佳子)

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