3人の顔を融合、ストーンズ新作『Foreign Tongues』ジャケット公開──作家が語る制作秘話

ザ・ローリング・ストーンズの新作アルバム『Foreign Tongues』のジャケットが公開された。3人のメンバーの顔を融合させたモンタージュを手がけたナサニエル・メアリー・クインが、その制作秘話を語った。

ナサニエル・メアリー・クイン《Stones Trinity》(2025) Photo: Courtesy the artist and Gagosian
ナサニエル・メアリー・クイン《Stones Trinity》(2025) Photo: Courtesy the artist and Gagosian

昨年の秋、ブルックリンの自宅キッチンにいたナサニエル・メアリー・クインのもとに、ミック・ジャガーと音楽プロデューサーのアンドリュー・ワットから電話がかかってきた。その通話で、7月10日にリリースされるザ・ローリング・ストーンズのニューアルバム『Foreign Tongues』のジャケットを制作することが決まった。クインは当時をこう振り返る。

「キッチンに立ったまま、ミック・ジャガーと話していたんです。本当に現実なのかと疑いました」

完成したのは、ジャガー、キース・リチャーズ、ロニー・ウッドの顔をひとつに融合させた、妖しくも目を引くモンタージュだった。この作品は現在、ザ・ローリング・ストーンズが世界各地で展開するプロモーションのメインビジュアルにも使われている。クインはさらに、キャンペーンに合わせて、バンドを象徴する唇と舌のロゴも新たにデザインした。

3人の顔を融合させたコンセプトの裏側

きっかけは、昨年9月にチェルシーのガゴシアンで開催されたクインの個展「Echoes from Copeland」の終了後に訪れた。クインによると、ジャガーはこの展覧会に2度足を運んでいたという。その後、クインの妻でマネージャーでもあるドナ・オーガスティン・クインのもとに、音楽業界の重鎮ジミー・アイオヴィンから「ストーンズがニューアルバムのカバーを作れる人を探している」とメッセージが届いた。ほどなくして、『Hackney Diamonds』に続き『Foreign Tongues』も手がけたプロデューサーのワットから連絡が入り、ジャガーとの通話へとつながった。

クインはジャガーに、メンバーの顔をひとつにまとめる構想を最初に伝えた。するとジャガーは、「まさに同じことを考えていたよ」と答えたという。

最初の会話で、ジャガーたちはインスピレーションの手がかりになるよう、アルバムから3曲をクインに聴かせた。その音源は、作品の方向性を探るうえで大きな助けになったという。その後9カ月にわたり、クインはジャガーやリチャーズと定期的に連絡を取り、2週間に一度ほどのペースで会話を重ねながらイメージを膨らませていく。やがて、リチャーズのトレードマークであるヘアバンド、ウッドの髪と鼻、ジャガーの唇が、ひとつの作品の中に組み込まれていった。

リチャーズやジャガーから得たインスピレーション

あるとき、リチャーズはロウアー・マンハッタンで行われたリハーサル・セッションにクインを招いた。親友を連れて訪れたクインは、リチャーズが地元のミュージシャンたちとジャムセッションを繰り広げる様子を一晩中見守った。セットの合間にはリチャーズの隣に座り、ストーンズ初期の物語に耳を傾けたという。

クインはリチャーズについてこう語る。「彼は本当に素晴らしく、地に足の着いた人です。彼にとっては、音楽こそが全てなんですよ」

リチャーズとの交流から数週間後、クインはニューヨーク近代美術館(MoMA)の向かいにあるバカラ・ホテルで、ジャガーとランチを共にした。コーヒーを飲みながら、二人は家族やロンドンのこと、人種をめぐる問題、そしてストーンズにインスピレーションを与えた黒人ミュージシャンたちについて語り合った。クインの記憶によれば、ジャガーは彼にこう語ったという。

「私たちの音楽はすべて、アメリカの黒人音楽の影響を受けています。私たちは彼らを深く知り、彼らのようになりたかったんです」

ナサニエル・メアリー・クイン《Stones Tongue》(2026) Photo: Courtesy the artist and Gagosian
ナサニエル・メアリー・クイン《Stones Tongue》(2026) Photo: Courtesy the artist and Gagosian

クインの案にジャガーが示した懸念

制作過程は、必ずしも順調に進んだわけではない。クインによると、ジャガーはモンタージュ作品について「少し怖すぎるのではないか」と懸念し、別案の制作を求めたという。その結果、メンバー3人がヴィンテージのスポーツカーから降りてくる姿を描いた作品も完成した。だが最終的に、メンバーは満場一致で当初のモンタージュをジャケットに採用した。クインはいまも、この2枚の絵画と著作権を保持している。

この契約をまとめるには、クインの代理人とザ・ローリング・ストーンズの法務チームとの間で、数カ月に及ぶライセンス交渉が必要だった。作品の所有権をクイン側に残しながら、バンドがアルバムのキャンペーンで画像を使えるよう調整したのは、妻の功績だとクインは語っている。

プロモーションが始まると、反響はすぐにクインのもとへ届いた。以前からクインの作品を所有していたエルトン・ジョンは、カバーアートの解禁を見るやいなやFaceTimeで連絡してきた。「君のおかげで、アルバムのジャケットがまたクールなものになったよ!」と、ジョンは絶賛した。

その後、ウィリアムズバーグでリリースイベントが開催された。ステージ上では、クインが手がけたアートワークとリデザインされた舌のロゴの下で、コメディアンのコナン・オブライエンがジャガー、リチャーズ、ウッドにインタビューを行った。クインによると、イベント開始前にはレオナルド・ディカプリオが彼のもとに歩み寄り、このコラボレーションは自分の功績だと冗談交じりに語ったという。「他の誰の言葉も信じちゃいけないよ。あなたにジャケットアートを任せるべきだとミック・ジャガーに伝えたのは、この僕なんだから」と、ディカプリオはクインに話した。

イベント中、オブライエンがクインに絵画について質問すると、ジャガーはステージ上からこのアーティストを称賛した。クインにとって、その瞬間はいまも現実として受け止めきれないほどの出来事だったようだ。「ミック・ジャガーが、あんな大勢の前で私に賛辞を送ってくれたんですよ。本当に最高でした」

(翻訳:編集部)

from ARTnews

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