ファッションとアートのクリエイティブな衝突を体験しよう! 渋谷ファッションウィークのアートな楽しみ方
東京カルチャーのエピセンターである渋谷を舞台に開催される「渋谷ファッションウィーク」が今年も開催中。期間中には渋谷のそこここで、ファッションと多様なカルチャーとをつなぐさまざまなイベントが開かれているが、ARTnews JAPANでは、中でもアート的な視点から、注目のイベントを紹介する。
渋谷ファッションウィーク(SFW)期間中は、渋谷の街全体をアートやクリエイティブの力で盛り上げる多種多様な企画が随所で計画されている。その中心的役割を担うのが、東京の街全体を舞台にしたデザイン&アートフェスティバルを展開するDESIGNARTによるアートイベント「FASHIONART」だ。「渋谷縁日」と題された展示会も「FASHIONART」のプログラムの一つで、「渋谷の谷底から、世界へ」をタグラインに、混沌とした渋谷の魅力を発信するアートギャラリーSACSを会場に、5人の気鋭作家を紹介している。
進化し続ける渋谷の「いま」
中でも注目すべきは、今年1月31日に多くに惜しまれつつ閉店した東急本店や109といった商業施設から、今や世界的に有名になったハチ公前の交差点や駅を行き交う人々など、渋谷の文化形成に貢献してきたランドマークをレンズに収め、「渋谷は消えない」シリーズとして2020年の渋谷ファッションウィーク「FASHIONART」で発表した写真家、岩渕一輝。今回展示しているのは、同シリーズ撮影時から大きく変貌を遂げた現在の渋谷を新たに切り取った最新シリーズだ。建物に対しても人々に対してもエモーショナルな眼差しを向ける岩渕が捉えた「渋谷の風景」に、ぜひ自分の渋谷の記憶や思いを重ねてみてほしい。3月26日(日)には、岩渕自らが来場者のポートレイトを撮影するというセッションも開催する(14:00~19:00)。自分らしいファッションを身に纏って、ぜひ参加しよう。
また、渋谷を体現する「Cutting Edge」という言葉を冠した作品を発表するのは、角田陽太。イギリスの名門、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)で学び、日本に帰国後はプロダクトデザイナーやクリエイティブディレクターとして活躍する彼は、ベルリンやロンドンなどでDJとしても活躍した経歴を持つ。言わずもがな、渋谷はクラブカルチャー発信地であり、東京の音楽シーンに欠かせない街。角田は音楽にも造詣の深いクリエーターらしく、今回、12インチのアナログレコードとそのジャケットを彷彿させるタブロー作品を制作した。また、本展の会場音楽の選曲・ミックス・サウンドプロデュースも手がけているほか、3月24日には同会場にて「花金」と題したイベント(19:00〜22:00)も開催し、ゲストDJとともにパフォーマンスを行う予定だ。
さらに「渋谷縁日」では、こんなユニークな作品にも出合うことができる。渋谷を拠点に活動するCookie Boyは、なんとクッキーをキャンバスに見立ててアイシング技術でさまざまな絵を描くアーティスト。今回は、これまで大切に作りためてきた作品の中から渋谷と春をテーマにセレクトした、縁起物である熊手が着想源のカラフルな「KUMADE」シリーズを発表する。またヘナアーティストでエッセイスト、ラジオDJ、社会科教員などさまざまな顔を持ちつつも、「多様性と包摂」というメッセージを全ての活動において大切にしている長井優希乃や、版画や活版の技法を取り入れた作品制作を行うプリントメイカーでイラストレーターのtentも参加。渋谷らしい多種多様なクリエイティブに一気に触れることのできるまたとない機会だ。
渋谷縁日
・会場:SACS Shibuya Art Collection Store
・会期:開催中~26日(日)まで
・時間:12:00~20:00
ファッションフォトの世界を掘り下げる
また、SFWの後半戦の目玉企画として忘れてはならないのが、森岡書店によるトークイベント「この素晴らしきファッション写真」だ。伝説のカルチャー誌『Relax』(マガジンハウス)元編集長であり、90年代から現在までの渋谷を編集者の目線から見続けてきた岡本仁と、森岡書店代表の森岡督行が、過去の雑誌の中から今も重要だと考える世界のファッションフォトをそれぞれ3点持ち寄り、その作品の歴史的意義や制作背景にある時代精神などについて語り合う。二人が紹介する作品の中には、渋谷を舞台に撮影されたものも。さらには、今年7月8日(土)よりヒカリエホールAにて回顧展を開催予定であり、50年代のニューヨークに生きる人々のささやかな日常を切り取った伝説の写真家、ソール・ライターについて、写真展企画プロデューサーの佐藤正子も交え、ライターがファッション&アート界に遺したヘリテージを再発見していく。
森岡書店トークイベント
・会場:渋谷ヒカリエ8階「8/ COURT」
・日時:3月30日(木)19:00〜20:30
・定員:80名(Peatixにて先着申込順)
渋谷の夜を彩るプロジェクション作品
さらにSFWの最後の一週間を飾る企画として、3月25日(土)から31日(金)の18:00より、渋谷駅東口駅前広場 東京メトロ銀座線高架下にプロジェクション作品を投影する。本作は、「コーラスクロール アンダーザブリッジ」と題されたこの作品は東京クリエイティブサロンと渋谷ファッションウイーク、そしてCCBT(Civic Creative Base Tokyo)の共同施策となり、今年1月に結成された美術家・音楽家の小松千倫、声楽家の三好優夏、アーティスト・アニメーターの米澤 柊、そして東京都の小学生たちによるコーラスグループ、こだまたち(KODAMATACHI)による『翼をください』の合唱に合わせて、キャラクターの身体がシンクロして動くというもの。さらに、所定のARマーカー(ARマーカーの場所は、渋谷区内の特定の町内掲示板に掲示)に合わせてスマホをかざすと、このキャラクターが渋谷の街に浮かぶというARも楽しめる。
コーラスクロール アンダーザブリッジ
・開催場所:渋谷駅東口駅前広場 東京メトロ銀座線高架下
・会期:2023年3月25日(土)~3月31日(金)
・時間:18:00~23:00(都合により、開催期間・投影時間が変更する可能性あり)