占領下クリミアで違法発掘、エルミタージュ美術館研究員など2名を戦争犯罪容疑で捜査
ウクライナの検察当局が、クリミア自治共和国においてロシアのエルミタージュ美術館関係者らが行っている遺跡発掘は、文化遺産に対する戦争犯罪に当たるとして捜査を開始した。出土品はエルミタージュ美術館が所蔵品として登録したとされる。

8月17日、クリミア自治共和国およびセバストポリ市の検察当局は、戦争犯罪の疑いで研究者2人の捜査を始めたことを発表した。氏名は公表されていないが、当局によると両名は2014年以来、ロシア占領下のクリミアで違法な考古学調査に従事していたという。
捜査対象となっている1人はロシアの国立エルミタージュ美術館の研究員で、もう1人は、「ロシア科学アカデミー・クリミア考古学研究所」を名乗る組織の代表者とされる。当局が発表した容疑により、2人には最高12年の懲役刑が科される可能性がある。
容疑者らは2014年から、クリミア半島のスタールイ・クリムにある中世のソルハト遺跡で、ウクライナの管轄機関からの許可を得ずに発掘調査を行っていた。ウクライナは、ロシアをクリミアの正当な政府として認めておらず、同地域での発掘調査にはウクライナによる許可が必要だと主張している。
当局はまた、ソルハト遺跡の文化的に重要な部分が破壊されたと発表。容疑者の1人は、給水システムの一部のほか、施釉された鉢や食器の破片などの遺物をサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に引き渡し、同美術館はこれらを自館の所蔵品として登録したとされる。同美術館の広報部門は、コメント要請に現時点で応じていない。
エルミタージュ美術館は、燃料不足とウクライナによる継続的な攻撃のため、今年6月にクリミアの占領地域における発掘調査を一時停止した。当時ARTnews JAPANが報じたように、ロシアによる考古学調査は往々にして、同国と国際的な考古学界との対立の火種になっている。
欧州連合理事会は4月、1992年からエルミタージュ美術館の館長を務めるミハイル・ピオトロフスキーを正式に制裁対象に加えた。同理事会によると、ピオトロフスキーはウラジーミル・プーチン大統領の「側近」で、「ロシアによるウクライナへの侵略戦争を支持し、正当化してきた」とされる。
しかし、クリミアを含むウクライナでロシア政府が行っている戦争に反対するロシア人も多い。その1人であるエルミタージュ美術館の現代美術部門長は、侵攻に抗議して2022年に辞任している。(翻訳:石井佳子)
from ARTnews