メキシコシティの美術館・ギャラリー20選──世界のアートマップを塗り替える中南米の重要拠点

2月のアートウィークには世界中のコレクターとキュレーターが押し寄せ、ローマ地区やフアレス地区の街角には新しいスペースが生まれつづける──いま中南米で最も勢いのあるアートシーンのひとつ、メキシコシティ。20の美術館やギャラリーを通じて、その熱気に迫る。

Photo: Carlos Aguilar/Unsplash

壁画運動の記憶を宿す美術館群やクリマンスト(kurimanzutto)に代表される世界的なギャラリー、街の混沌を糧に増殖する若いスペース……。メキシコシティのアートシーンでは、性格の異なるアート施設が同じ街に共存している。毎年2月のアートウィークには、Zona Maco、Material、Salón ACMEという傾向の異なる3つのフェアが開かれ、世界中のコレクターとキュレーターがこの街に集まってくる。

さらに現在進行形で、シーンの構造も変わりつつある。伝説的なアーティスト・ラン・スペース、Luluが閉廊した一方で、マリアン・イブラヒムのような国際ギャラリーの参入も続いている。いまこの街のアートシーンはどう変わろうとしているのか? ARTnews JAPANが選定した20の美術館やギャラリー、アートブックストアを通じて、変化するメキシコシティのシーンを追いかけていこう。

1. Museo Jumex

ジュース財閥の御曹司エウヘニオ・ロペス・アロンソが設立した、ラテンアメリカ最大級の現代美術コレクションをもつ私設美術館。デイヴィッド・チッパーフィールドが同地域で初めて手がけた、ノコギリ屋根の建築が特徴的だ。2013年の開館後、コレクション展から国際的な巡回展まで幅広い展覧会を実施しており、ダミアン・ハーストやガブリエル・オロスコの大規模個展も開催されている。

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2. MUAC

メキシコ国立自治大学(UNAM)が運営する、大学附属の現代美術館。世界遺産に登録されたUNAMの大学都市の一角に立ち、テオドロ・ゴンサレス・デ・レオンが設計した傾斜ガラスのファサードが象徴的な建築には、1952年以降のメキシコ現代美術が体系的に収蔵されている。政治や社会に切り込む企画を実施していることで知られ、カタログや教育プログラムの充実も含めて、この国の現代美術の言説を支える中心的な機関と言える。

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3. Museo Tamayo

画家ルフィーノ・タマヨ(Rufino Tamayo)と妻オルガ・タマヨ(Olga Tamayo)が自らのコレクションを国に寄贈して1981年に開館した、チャプルテペック公園内の現代美術館。MUACを手がけたゴンサレス・デ・レオンとアブラハム・サブルドフスキーが設計した建築は1981年に建築国家賞を受賞しており、森に半ば埋め込まれるように立っている姿が印象的だ。タマヨの遺志を継いで国外の重要なアーティストをメキシコに紹介する役割を担っており、ペトリット・ハリライ(Petrit Halilaj)のラテンアメリカ初個展などを開催してきた。

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4. Museo Experimental El Eco

ドイツ出身の彫刻家マティアス・ゲーリッツ(Mathias Goeritz)が1953年に建て、翌年「感情建築」の宣言として言語化した実験空間。白と灰色で塗り分けた壁、傾いた床と歪んだ通路、鋭角に切り取られた中庭。その中庭に高さ11メートルの黄色い壁状彫刻《黄色い塔》が立ち、建物そのものがひとつの彫刻になっている。2005年からはメキシコ国立自治大学の運営のもと、この空間と対話するコミッション企画を続けており、サンラファエル地区で20世紀メキシコの前衛精神に触れられる場所だ。

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5. Museo Universitario del Chopo

1902年にドイツの建築家ブルーノ・メーリングが設計した鉄骨とガラスの建物を移築した文化施設。1980年に館内でレコードや音楽誌を交換する市として始まった「ティアンギス・クルトゥラル・デル・チョポ」は場所を移しながらパンクスやメタル、ゴスの愛好家が集う場として45年続いており、メキシコのカウンターカルチャーを象徴する存在になった。美術館自体もその気風を受け継ぎ、現在はクィアの表現や実験音楽、現代美術を横断するプログラムを展開。

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6. LagoAlgo

チャプルテペック公園の湖畔に立つ、1964年開業のレストラン「ラゴ・マヨール」を再生したハイブリッド・スペース。翼のように大きく反り返った屋根をもつモダニズム建築が特徴で、ギャラリーOMRが主導するアート部門「ALGO」は無料で公開されている。レストランとアートと公園の風景がひと続きになった、都市文化と融合するアートスペースだ。

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7. kurimanzutto

1999年、モニカ・マンスットとホセ・クリがガブリエル・オロスコとともに立ち上げた、メキシコ現代美術を中核とする世界的なギャラリー。固定空間をもたない運営形態からスタートし、現在は材木置き場やパン工房として使われた1949年築の建物を拠点に、ニューヨークにもスペースを展開している。アンリ・サラやヘグ・ヤンなど、世界のアートシーンとメキシコをつなげるような展覧会を行っている。

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8. OMR

1983年、パトリシア・オルティス・モナステリオとハイメ・リエストラが創業した老舗ギャラリー。2015〜2016年に移転した現在の拠点は、シュルレアリスムの画家レメディオス・バロ(Remedios Varo)のパートナー、ワルター・グルーエン(Walter Gruen)が1950年代に開いたレコード店「サラ・マルゴリン」の跡地にある。レオノーラ・キャリントンの遺作展のような歴史的企画から現代の実験的展示まで企画のレンジは広く、LagoAlgoの企画も手がけるなど、老舗でありながら都市に開かれた活動を続けている。

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9. LABOR

社会・政治・環境をめぐるリサーチ型のプログラムで知られるギャラリー。ペドロ・レジェス(Pedro Reyes)やサンティアゴ・シエラ(Santiago Sierra)、ルイス・カムニッツァー(Luis Camnitzer)など、アートと社会運動の境界で活動するアーティストたちとコラボレーションを続けている。ルイス・バラガン邸の向かいの住宅地に立つ空間は小さいが、アート・バーゼル・パリにも出展するなど、国際的な発信にも取り組んでいる。

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10. House of Gaga

2008年の開廊以来、メキシコとグローバルの若い才能をいち早く見出してきたギャラリー。グアダラハラとロサンゼルスにも拠点をもち、メキシコシティのスペースでは実験的な絵画や彫刻、パフォーマンスの展示が続いている。近年はペーター・フィシュリ(Peter Fischli)やコジマ・フォン・ボニン(Cosima von Bonin)など、国際的なアーティストの展覧会にも積極的。

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11. Proyectos Monclova

2005年に設立され、2020年に高級住宅街ポランコへ移転したコンセプチュアル志向のギャラリー。メキシコのコンセプチュアリズムを担う中堅アーティストの紹介と、幾何学的な抽象絵画の巨匠マヌエル・フェルゲレスのようなモダンアーティストの再評価に取り組んでいる。フリーズ・ロサンゼルスなど国際フェアへの出展も続けている。

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12. Travesía Cuatro CDMX

マドリード発のギャラリーが2019年に開いた3拠点目のスペース。ローマノルテのネオコロニアル建築を改装した空間で、イベリア半島と中南米、大西洋両岸のアーティストを行き来させている。あいちトリエンナーレや光州ビエンナーレに参加したタニア・ペレス・コルドバ(Tania Pérez Córdova)の個展など、この地域の同時代的なシーンを反映した企画を多く展開していることが大きな特徴のひとつだ。

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13. Mariane Ibrahim

シカゴとパリに拠点をもつソマリ系フランス人ギャラリスト、マリアン・イブラヒムが2023年に開いたギャラリー。クアウテモックの19世紀建築を改装した2フロアの空間で、アフリカ系・アフロディアスポラのアーティストを一貫して紹介している。アフロメキシコの表現とグローバルなブラックアートを接続する展示編成は、独自性が高いアプローチと言えるだろう。

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14. Lodos

フアレスとサンミゲル・チャプルテペックの2拠点で展開する、若手の登竜門的なギャラリー。創設者のフランシスコ・コルデロ=オセゲラがシカゴ美術館附属美術大学で学んだのち2013年に立ち上げ、実験性の高いプログラムを展開している。アート・バーゼルやリステ・バーゼルへの出展を重ね、ターナー賞の最終候補に挙がったギスレーヌ・レオン(Ghislaine Leung)が参加するグループ展も開催した。

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15. LLANO

レフォルマ通り沿いのビルにある、リサーチ型のスペース。展覧会を長期のリサーチの節目として位置づけ、パフォーマンスや出版も取り入れたプログラムを企画している。ニューヨークのグッゲンハイム美術館に作品が収蔵されるパフォーマンス・アーティスト、カルロス・マルティエル(Carlos Martiel)の個展など、身体と社会をめぐる企画が続いている。

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16. PEANA

北部の工業都市モンテレーで2017年に設立し、ロマスルへ拠点を広げたギャラリー。立体作品やインスタレーションを軸にした展覧会が多く、メキシコ国内の都市間、さらには中南米を横断するネットワークをプログラムに取り入れている。フリーズ・ロンドンやリステ・バーゼルにも出展しており、ブラジルのアーティストの個展も企画するなど幅広い取り組みを展開している。

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17. Salón Silicón

クィアとフェミニズムの視点を掲げて2017年に開廊したギャラリー。2022年にエスカンドンからロマスルへ移転し、性とアイデンティティをめぐる表現を一貫して見せている。こうしたコンセプトをコマーシャル・ギャラリーとして成立させている例はメキシコでも少なく、シーンの多様化を象徴する存在と言えるだろう。

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18. MASA Galería

デザイナーやコレクターを含む5人が2018年に共同で設立した、アートだけでなくコレクティブルデザインを扱うギャラリー。サンミゲル・チャプルテペックの邸宅を舞台に、彫刻とも家具ともつかない作品を空間ごと見せる展示をつくってきた。ニューヨークのLuhring AugustineやロンドンのModern Artといった海外ギャラリーとコラボレーションした展覧会を行っているのも特徴的だ。

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19. Patricia Conde Galería

メキシコの写真表現に特化した専門ギャラリー。マヌエル・アルバレス・ブラボのヴィンテージプリントを扱い、エクトル・ガルシアら同時代の巨匠から現代の写真家まで、幅広い写真表現をひとつの系譜として見せている。サンミゲル・チャプルテペックのギャラリー街にあり、写真集の出版や販売も行う。国際写真アートディーラー協会(AIPAD)の会員でもある。

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20. Casa Bosques

ローマノルテに建つアート・デザイン・ファッションの専門書店。メキシコに留まらずさまざまなインディペンデント出版物をキュレーションしており、ショコラティエのホルヘ・ジャンデラルと組み、各国産のカカオにカルダモンやワサビなどの香辛料を合わせる自社ブランドのチョコレートでも知られる。ギャラリー巡りの合間に立ち寄ってみるのもいいだろう。

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