プーチン風刺で知られるロシア人アーティストが射殺。死亡数時間前に脅迫メッセージ公開

6月16日、ロシアの権力者や反体制派を風刺の対象にしてきたアーティスト、セミョン・スクレペツキー(本名:ロベルト・クゾフコフ)が、ポーランド東部で射殺された。2021年から同国で暮らしていた彼は、今年のヴェネチア・ビエンナーレでも作品をゲリラ発表していた。

2026年6月12日、ベルリンでパフォーマンスを行うセミョン・スクレペツキー。Photo: Vasily Krestyaninov/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

6月16日、44歳のロシア人アーティスト、セミョン・スクレペツキー(本名:ロベルト・クゾフコフ)がポーランド東部ルブリン県のビャワ・ポドラスカ市で銃撃され死亡した。

Art Reviewによると、ベラルーシ国籍の33歳と37歳の男性2人が拘束されたものの、現時点では起訴には至っていない。うち1人はベラルーシ領事館近くで逮捕されたという。また英紙テレグラフは、被害者の体に5発の銃創があったと報じている。

アーティスト兼パフォーマーであるスクレペツキーは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領、チェチェンの指導者ラムザン・カディロフ、そしてロシア正教会のキリル総主教といった権力者を風刺した肖像画で注目を集めた。テレグラフ紙によれば、さらにはプーチン政権の腐敗を告発し続け、北極圏近くの刑務所で死去した政治家アレクセイ・ナワリヌイとその妻ユリア・ナワルナヤや、ロシア政府を批判し、YouTubeチャンネルの登録者が約250万人に達する活動家マクシム・カッツといった反政府的人物も対象としていた。

ルブリン県検察の報道官マルチン・コザクはテレグラフの取材に対し、6月16日午前10時ごろ、ビャワ・ポドラスカ市内の駐車場で身元不明の人物がスクレペツキーに向けて拳銃を3発発砲し、彼が倒れた後に近づいて至近距離からさらに2発を撃ったと説明した。遺体の検視では、頭部と胸部に計5カ所の入射創と2カ所の出射創が確認されたという。また同紙は、警察がスクレペツキーの子どもたちが通う学校や保育施設にも警官を派遣したと伝えている。

一方、ポーランド警察の報道官は地元テレビ局TVNに対し、「犯行の動機は不明だ」と述べた。しかしドナルド・トゥスク首相は6月17日、France 24の取材に対し、この事件は政治的動機による殺害である可能性が高いとの見方を示した。France 24は、イギリスやドイツ、リトアニアなどでもロシア政府に反対する人物が殺害される事件が起きていると指摘している。

2026年5月6日、ヴェネチア・ビエンナーレ会場のジャルディーニで作品を公開するロベルト・クゾフコフ。Photo: Stefano Mazzola/Getty Images

事件の数日前にはドイツでパフォーマンスを実施

スクレペツキーは、政治的迫害を恐れて2021年からポーランドで暮らしていた。今年の6月12日にはドイツ・ベルリンを訪れ、ロシア大使館前でパフォーマンスを実施した。彼が掲げたのは、ロシア正教のイコン(聖像画)の伝統的な様式をもじった作品で、笑みを浮かべるソ連の独裁者ヨシフ・スターリンが幼いプーチンを抱き、その口元から血が滴る姿を描いたものだった。テレグラフによれば、彼はさらにズボンの後ろからロシア国旗を引き出し、ゴミ箱に投げ込むパフォーマンスも行ったという。

また、今年のヴェネチア・ビエンナーレのプレビュー期間中には、プーチンを風刺した2点の絵画を会場の一つであるジャルディーニで公開していた。一方、ロシア館前ではプッシー・ライオット(Pussy Riot)や、ウクライナ・キーウで結成されたアクティビスト集団フェメン(FEMEN)などが抗議活動を展開し、ロシアの参加に反対する声を上げていた。ロシアは2022年のウクライナ全面侵攻以降、同ビエンナーレへの参加をめぐって国際的な批判にさらされ続けている。

スクレペツキーはベルリンでのパフォーマンス後、自身のTelegramチャンネルに「ロシア愛国者たちに大人気だった」と冗談交じりに投稿し、レイプの脅迫を受けたことも明かしていた。投稿はその後削除されたと報じられている。またArtReviewによると、死亡する数時間前にも、ロシア人から送られてきたとみられる脅迫メッセージのスクリーンショットを投稿していた。

さらに同誌は、ウクライナの民間団体が運営するとされ、「国家安全保障への脅威」と独自に判断した人物を掲載するデータベース「Myrotvorets(ミロトヴォレツ)」にスクレペツキーの名前が登録されていたと報じている。現在、同サイトの彼のページには「抹殺済み(liquidated)」と記載されているという。(翻訳:編集部)

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