安全対策に疑問の声──ライト旧邸での死亡事故、元従業員は「屋根から物が外れるのを2度目撃」
フランク・ロイド・ライトの旧居タリアセン・ウエストで起きた死亡事故を受け、維持管理や安全対策に疑問の声が上がっている。元従業員は過去にも屋根から部材が外れるのを目撃したと証言した。

アメリカ・アリゾナ州スコッツデールにある建築家フランク・ロイド・ライト(1867–1959)の旧居兼アトリエ、タリアセン・ウエストで10月16日、強風で外れたアクリル製の屋根部材が見学者に当たり、死亡する事故が起きた。これを受け、施設の維持管理や安全対策に疑問の声が上がっている。
スコッツデール警察によると、亡くなったのはブラジルのパラナ教皇庁立カトリック大学学長、ロジェリオ・レナト・マテウッチ(55歳)。大学幹部向けの国際プログラムに参加するため、アリゾナ州立大学を訪れていた。事故は施設内を歩いて巡る見学ツアーの途中に起き、現場で死亡が確認された。
米国立気象局によると、当日のスコッツデール周辺では時速約35キロの東風が吹き、最大時速約51キロの突風が観測されていたという。周辺地域には強風注意報が出され、移動や安全に支障が生じる恐れがあるとして警戒が呼びかけられていた。
施設を運営するフランク・ロイド・ライト財団のCEO、ジョー・スペクターは声明で、「亡くなられた方のご家族と親しい方々に、心よりお悔やみ申し上げます」と表明。「プライバシーを尊重し、当局が調査を完了できるよう、これ以上の詳細は公表しません」とした。当局は気象条件に起因する事故とみて、調査を進めている。

一方、事故から数日がたつなかで、安全対策によって防げたのではないかという疑問も浮上している。
ともにアリゾナを訪れていた同大学の副学長、ヴィダル・マルティンスは、地元紙アリゾナ・リパブリックに対し、「一般に公開されている場所なのですから、安全対策を講じる必要があります」と語った。マルティンスは見学ツアーには参加しておらず、事故の知らせを受けて現場に向かい、当局が立ち入りを規制していた区域でマテウッチの遺体を見たという。同紙には、敷地内の岩や砂漠の植物の間に半透明のパネルが落ちている写真も提供した。マルティンスによると、このパネルがマテウッチに当たった部材とみられる。
元従業員も、施設の安全性に懸念を示している。匿名を条件に地元テレビ局AZファミリーの取材に応じ、在職中の6カ月間に、屋根から物が外れるのを2度目撃したと証言した。また、7月のモンスーンに伴う荒天時には、同様の透明なパネルが風で揺れ、外れかける様子を撮影していたという。「建物の安全を確保するために必要なところへ資金が適切に回されているとは思えません」と訴えた。
アリゾナ・リパブリックは財団に対し、屋根の点検や強風への対策、再開の見通しについて質問したが、財団が示した声明は点検や安全対策には触れていなかった。施設は現在も一般公開を停止しており、再開日は決まっていない。
タリアセン・ウエストは、ライトが1937年に建設に着手し、1959年に亡くなるまで冬の住まい兼アトリエとして使用した。かつてはフランク・ロイド・ライト建築学校の教育拠点でもあった。同校はその後、ザ・スクール・オブ・アーキテクチャー(The School of Architecture)に改称し、現在はスコッツデール市内の別の場所で教育活動を続けている。タリアセン・ウエストはフランク・ロイド・ライト財団の本部となり、見学ツアーや展示、教育プログラムを通じてライトの建築を伝える施設として一般公開されていた。(翻訳:編集部)
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