ペース・ギャラリーの赤字報道にCEOが「底を脱した」と宣言。欧州で新拠点開設も計画
ペース・ギャラリーが、英国法人の売上減少と赤字報道を受け、今後の展望を明らかにした。CEOのマーク・グリムシャーは、事業はすでに黒字に回復したと強調。欧州で近く新たな拠点を開設する計画も語った。

ペース・ギャラリーのCEO、マーク・グリムシャーは11月2日、イギリス法人の売上減少と赤字を伝えた一連の報道を受け、US版ARTnewsの電話取材に応じた。事業はすでに黒字に回復したと述べ、欧州では「かなり近いうちに」新たな拠点を開設するという。直近の販売状況についても、次のように明るい見通しを語った。
「私たちは底を脱しました。先日のアート・バーゼル・パリでは過去最高の成績を収め、若手作家を中心に、出品作品が完売する展覧会も続いています。全てが好転しています」
アート・バーゼル・パリでは過去最高益
今回の報道の発端となったのは、ペースのイギリス法人、ザ・ペース・ギャラリー・リミテッド(The Pace Gallery Limited)の決算だ。同社は欧州とアジアの事業を傘下に置く統括会社で、アメリカと東京の事業はこの決算に含まれない。
同社は10月21日、イギリスの企業登記機関であるカンパニーズ・ハウス(Companies House)に、提出期限から10カ月遅れで2024年の決算を提出した。売上高は6770万ドル(現在の為替で約107億円、以下同)と、2023年の1億500万ドル(約166億円)から35.5%減少。税引き前損益は、前年の680万ドル(約10億7600万円)の黒字から2429ドル(約38万4000円)の赤字に転じた。続いて公表された2025年の決算でも、売上高は前年比2.6%減の6590万ドル(約104億2700万円)となった。
こうした決算について、グリムシャーは次のように説明した。
「貸借対照表上の組み替えを行いました。赤字に見えるのは、資金の投じ方や他の拠点からの資金の受け取り方を変え、各拠点で独立して資金を回せるようにしているためです。各拠点の自律性を高め、自立した運営ができるように準備中で、そのためには貸借対照表を組み替える必要があります」

ペースは今年、事業の再編を進めてきた。6月には従業員50人を解雇し、約50組の作家との所属契約を解消。現在の所属作家は85組となっている。アートネットが同年2月と6月の公式サイトを比較したところ、高松次郎、チームラボ、JR、キース・コヴェントリー(Keith Coventry)、ジョン・ジェラード(John Gerrard)、グレン・カイノ(Glenn Kaino)らの名前が所属作家リストから外れていた。ただし、全員が今回の再編に伴って離れたかどうかは明らかでない。
一連の動きが一段落したいま、ギャラリーは新たなスタートを切る準備が整ったとグリムシャーは語る。
「新しい作家は常に迎えています。一方、所属を離れたのは、実際にはあまり一緒に仕事をしていなかった作家たちです。私たちが十分に取り組めていない分野があり、作家にとっても私たちにとっても、よい結果に繋がっていませんでした。非常に活発な協働関係を築いていた作家たちではなかったのです。要は、手を広げて十分な成果を上げられずにいるよりも、取り組みを絞り、その質を高めるために力を集中させるということです」
ロンドンは世界的なハブになり得る
各地の不動産も見直している。6月にはロンドンの物件が市場に出され、ペースは市内で「企業的な雰囲気を抑えた」空間を探していると説明した。9月には、ニューヨーク・チェルシー地区にある本部の一部について、入居者を募集すると発表。それでもグリムシャーは、ロンドンが引き続き「素晴らしい市場」であると強調する。
「ロンドンの事業は非常に順調です。ロンドンから撤退することは決してありません」
また、多くのギャラリーがロンドンを国際的な事業のハブとして活用していると指摘した。
「アジアと欧州の各拠点を統括する多くの業務が、ロンドンで行われています。本部を置くには最適な場所で、ニューヨークと同じように大きな存在感を持っています」
ロンドンの移転先については、すでに「素晴らしい候補がいくつかある」と明かした。現在のギャラリーはハノーヴァー・スクエアに位置し、広さは約800平方メートル。新拠点も「ほぼ同じ広さで、私たちが取り組んできた運営モデルに合う、さらに好立地の場所になる」という。
グリムシャーによると、ペースはグループ各社の連携の仕組みも大幅に見直してきた。ベルリンと日本の拠点での成功は、事業全体の戦略を考えるうえで「非常に参考になった」としている。近年はどのギャラリーも変革を進めており、ペースでは新たな戦略が成果を上げ始めているという。
「ロサンゼルスでは、今年すでに非常に大きな利益を上げています。私たちの取り組みは、もう実を結び始めています。市場が大きく変化したからこそ、成果に繋がっているのです。ロンドンで進めていることも、物件が決まって発表すれば、皆さんに十分納得していただけるでしょう」(翻訳:編集部)
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