《モナリザ》に「円形脱毛症」説が浮上──眉毛やまつげが見えない理由を皮膚科医が分析

ルーブル美術館を代表する名画《モナ・リザ》。そのモデルは円形脱毛症だったのか。イタリアの皮膚科医が、眉毛やまつげの欠如など4つの特徴に着目し、既存の画像分析や伝記資料をもとに新たな仮説を発表した。

レオナルド・ダ・ヴィンチ《モナリザ》(1503-19頃)Photo: Wikimedia Commons

レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)の代表作《モナリザ》(1503-19頃)。そのモデルは円形脱毛症を患っていたのではないか。イタリアの皮膚科医ルイジ・ライノが、そんな仮説を発表した。New York Postが伝えた。

ライノは、同作に描かれた特徴を、マルチスペクトル画像(複数の波長で撮影した画像)を用いた既存の分析資料や医学的知見、モデルとされるリザ・ゲラルディーニ(Lisa Gherardini、1479-1542)の伝記資料と照合。その結果、汎発型円形脱毛症を示唆する特徴があると指摘した。これは円形脱毛症のうち、頭髪だけでなく全身の毛が抜ける病型だ。

学術誌「Clinics in Dermatology」に掲載した論文で、ライノは4つの根拠を挙げている。左右両側の眉毛が完全に欠如していること、まつげも両側とも完全に欠如していること、前頭部の生え際に毛が徐々に密になる移行部分がないこと、そして眼の周囲や額の皮膚に瘢痕がなく、正常に保たれていることだ。

美容目的の脱毛やほかの疾患とも比較したうえで、これら全てを説明できるのは汎発型円形脱毛症だけだとライノは主張する。また、過去のマルチスペクトル撮影で、作品の眉の位置に1本の毛の痕跡が確認されたこともこの仮説と矛盾せず、むしろ同疾患で一部の毛だけが残る臨床所見と一致するという。

ただし、《モナリザ》の眉毛やまつげが当初から描かれていなかったのか、経年変化などによって失われたのかについては議論があり、絵画の描写だけからモデル本人が実際にその疾患を患っていたかどうかは判断できない。

さらにライノは、ゲラルディーニの人生にも自説を支える手がかりがあると考えている。彼女は10代でフィレンツェの織物商と結婚し、6人の子どもをもうけた。また、政治的混乱や宗教戦争、ペストの流行が相次ぐ時代を生きた。

ライノによれば、円形脱毛症を患う人にとって、こうした出来事のどれか1つによるストレスだけでも、脱毛の引き金になり得るという。それらが重なれば、ゲラルディーニが豊かな毛髪を保つのは難しかっただろうというのが、彼の見立てだ。

現代でも円形脱毛症は珍しい病気ではない。生涯のいずれかの時点で発症する人は、アメリカで約670万人、世界では約1億6000万人と推定されている。

《モナリザ》が展示されるルーブル美術館は、2025年には約900万人が訪れた。ライノは今回の調査を次のように結論付けている。

「美術史上、最も多くの人に見つめられてきたこの顔には、医学的に見れば、円形脱毛症を患う若い女性の姿が描かれていたのです。そのように捉え直すことを提案したいと思います」

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