ローラ・アリラガ=アンドリーセン&マーク・アンドリーセン(Laura Arrillaga-Andreessen and Marc Andreessen)
拠点:アメリカ・カリフォルニア州スタンフォード
職業:起業家、フィランソロピスト
収集分野:現代アート、戦後アメリカ美術
1989年に「ウェブの父」と呼ばれるティム・バーナーズ=リーがワールド・ワイド・ウェブ(www)の概念を考案してから数年後の1990年代前半、初期インターネット業界の巨人として名を馳せたのがマーク・アンドリーセンだ。彼は、世界で初めて画像とテキストを同時に表示できるウェブブラウザ、モザイクを共同開発して1993年にリリース。その後、ネットスケープ・コミュニケーションズを共同設立し、90年代に爆発的に広まったブラウザ、ネットスケープ・ナビゲーターで大成功を収めた。現在はシリコンバレーのベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツを経営するほか、メタ(旧フェイスブック)の役員も務めている。
一方、不動産で財を成した一家に生まれたローラ・アリラガ=アンドリーセンには、フィランソロピーに関する著書『Giving 2.0: Transform Your Giving and Our World』(2011)があり、そこから同じタイトルのオンライン講座も生まれた。彼女は、ローラ・アリラガ=アンドリーセン財団の運営に携わるかたわら、非営利の社会貢献事業「インキュベーター」を通じて、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグなど若い億万長者たちに、「築いた富を社会に還元する」よう働きかけている。
彼女はまた、シリコンバレーのエリートたちがアートギャラリーに親しむための活動をしている。短期間で財を成したIT長者たちは、本格的なアートコレクションを始めることにあまり積極的でないからだ。また、世界各地に拠点を持つメガギャラリーのペースは、2016年にシリコンバレーのメンローパークでアートとテクノロジーを融合させた作品を紹介する約2000平方メートルのスペースを開設したが、これはアリラガ=アンドリーセンの後押しで実現したものだ(チームラボの個展も開催)。なお、このスペースが閉鎖された後も数年間、ペースはメンローパークに隣接するパロアルトに拠点を構えていた。
美術史の学位を2つ持ち、ジャスパー・ジョーンズやアグネス・マーティンなど戦後アメリカ美術を重点的に収集しているアリラガ=アンドリーセンは、2020年にワシントンD.C.にあるナショナル・ギャラリーで10年任期の理事に選出された。ペースがメンローパークにスペースを開設した2016年、彼女は英ガーディアン紙の取材にこう答えている。「ソーシャルメディアが生まれたこの地では公私の境目が曖昧になりがちですが、真のコレクターにとってアートは自分だけのごくプライベートなものです。デジタルアートは紙や彫刻の作品とはまったく違う形で、シリコンバレーのコミュニティに浸透するでしょう」