ローラ&ジョン・アーノルド(Laura and John Arnold)

拠点:アメリカ・ヒューストン
職業:ヘッジファンドマネージャー、フィランソロピスト
収集分野:アフリカ美術、モダンアート、オールドマスター

2012年に自らのヘッジファンド、ケンタウルス・アドバイザーズを廃業して金融業界に衝撃を与えたジョン・アーノルド。彼は、元弁護士の妻ローラとともに慈善事業に専念するため、38歳で金融業界を引退した。その4年前の2008年、夫妻はローラ&ジョン・アーノルド財団を設立し、刑事司法改革、幼稚園から高校までの教育、公的説明責任・医療・情報の透明性などの改革を進めるための資金提供を行っている。

2010年には、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツと著名投資家ウォーレン・バフェットが始めた慈善活動「ギビング・プレッジ(*1)」に参加。アーノルド夫妻は、共同声明でこう述べている。「私たちはこれから、資産や時間といったリソースの大半を慈善活動に注ぎ、生涯を通じて変革をもたらすことを目指します。これほどやりがいのある仕事、これほど大きな使命はありません。そして、変化をもたらす活動を先送りする理由もありません」


*1 保有する資産の過半を、生前または死後に慈善活動に寄付することを誓約する慈善活動。

2019年、金融専門誌のバロンズは、アーノルド夫妻が非営利財団をアーノルド・ベンチャーズというLLC(合同会社)に転換し、助成金交付やロビー活動を行えるようにしたことを報じた。以来、慈善事業のために10億ドル(約1450億円)以上が寄付されている。

アーノルド夫妻が個人的なアート収集について口にすることはあまりないが、そのコレクションは近代および戦後美術が中心のようだ。アートコレクター情報メディアのラリーズ・リストによると、ウィレム・デ・クーニングやパブロ・ピカソなど、抽象表現主義やキュビスムの作品を多数購入している。アート収集が公に報じられたのは2010年のニューヨーク・タイムズ紙の記事で、ヒューストンのアートアドバイザー、ロバート・マクレーンがサザビーズ・ニューヨークでゲルハルト・リヒターの1966年の具象作品を1320万ドル(約19億円)で落札したのは、夫妻の依頼を受けてのことだったという。

オールドマスター(18世紀以前の巨匠作家)も好みのようで、2018年にヒューストン・クロニクル紙からオフィスに飾られた作品について尋ねられたジョン・アーノルドは、こう答えている。「バロック絵画が2点。チェッコ・デル・カラヴァッジョの懺悔するマグダラのマリアと、フランドルの作家による司教に悩みを打ち明ける男だ。それからアフリカ彫刻が数点ある」。一方、ロビーには、現代アーティストのタラ・ドノヴァンが無数のまち針で制作した巨大な立体作品と、チャック・クロースの自画像《pensive self-portrait》のタペストリーが展示されていた。


注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。
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