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ペドロ・バルボサ(Pedro Barbosa)

拠点:ブラジル・サンパウロ
職業:投資家
収集分野:現代アート(特にコンセプチュアリズムとそのアーカイブ資料)

債券取引で財を成したペドロ・バルボサは、サンパウロ市内の美術学生のスタジオではおなじみの存在だ。常に新しい才能を探し求めて世界中を飛び回り、トレンドを作り出す存在として評価されている彼は、有望な学生から直接作品を購入することも多い。

そのバルボサは、なんとなくコレクションを始めたという。初めての購入は1999年、ベネズエラのオプ&キネティック・アート(*1)の作家、ヘスス・ラファエル・ソトの立体作品だった。25年後の現在、バルボサのコレクションは2000点に及び、南米だけでなく世界的なコンセプチュアル・アートの重要コレクターとして、押しも押されもせぬ存在になっている。


*1 オプ(オプティカル)・アートとは、錯視・視覚や鑑賞者の視点によって見え方が変わる作品。キネティック・アートとは、動力、人力、自然の力で動く作品。いずれも「動き」を取り入れたアート。

2013年には、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のアート担当記者、ケリー・クロウの取材に、作品購入には通常1点あたり8000ドルから25万ドル(約117万円から3700万円)かけると答えている。所蔵作家には、マリオ・ガルシア・トレス、ローレンス・アブ・ハムダン、ジェームス・リチャーズ、ハンス・ハーケ、スタンリー・ブラウンなどの世界的アーティストのほか、シルド・メイレレス、ジュラシ・ドレア、シンシア・マルセル、ディアス&リードウェグといったブラジルの人気アーティストもいる。こうした地元作家の作品を収集していたのは賢明だったと言えるだろう。2000年代の大幅な経済成長でブラジル人アーティストの作品に注目が集まり、価格が上昇しているからだ。

バルボサは、サンパウロの高級住宅街ジャルダンの自宅に入らないものは、躊躇なく美術館に譲る。2013年には、ブラジルの2人のアーティスト、ジョナタス・デ・アンドラーデとアンドレ・コマツの作品をロンドンのテート・モダンに寄贈。現在は、EAI(エレクトロニック・アート・インターミックス)やBidounプロジェクツの役員に加え、ニューヨーク近代美術館のメディア・パフォーミング・アート委員を務めている。

アーティストに自宅で作品展示をさせることも多いバルボサは、より規模の大きな展示のため、近くにもう1つのスペースを所有している。彼の家の空いている壁は、全て次の購入作品のためにキープされているからだ。そんな彼はウォール・ストリート・ジャーナル紙にこう語ったことがある。「時々息子に文句を言われるが、これに関しては私の言う通りにしてもらう」


注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2024年版トップ200コレクターズが発表された2024年10月時点の為替レートによる。

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