ニコラス・バーグルエン(Nicolas Berggruen)

拠点:アメリカ・カリフォルニア州ビバリーヒルズ
職業:フィランソロピスト、投資家(バーグルエン・ホールディングス)
収集分野:近現代アート

ニコラス・バーグルエンのDNAには、アート収集への関心が刷り込まれているようだ。ディーラーでもありコレクターでもあった父、故ハインツ・バーグルエンが所有する美術品の価値は約4億5000万ドル(約653億円)にのぼり、それをもとに彼の名を冠した美術館がベルリンに設立された。また、サンフランシスコでギャラリーを運営するジョン・バーグルエンと美術史家のオリバー・バーグルエンは、ニコラスの兄弟にあたる。

ヨーロッパの高級ホテルを転々とする暮らしぶりから、米ブルームバーグ通信に「ホームレスの億万長者」と呼ばれたニコラスは、投資会社のほかバーグルエン研究所を運営している。同研究所のウェブサイトによると、「21世紀最大の課題に対する長期的な回答をもたらす」方法として、「政治・社会制度の再構築に向けた基礎的なアイデアを生み出す」ことを目指しているという。また、2016年に創設したバーグルエン哲学・文化賞(賞金100万ドル)の受賞者には、長年にわたり米最高裁判事を務めた故ルース・ベイダー・ギンズバーグや哲学者のチャールズ・テイラーなどがいる。

アート界でも同研究所の影響力が増している。2021年にニコラスは、研究所で使用するためにヴェネチアで「Casa dei Tre Oci」と呼ばれる邸宅を取得。この場所では、イギリスのテートやニューヨーク近代美術館との共同イベントや展覧会が計画されている。2022年にはヴェネチアで第2のスペースとなるパラッツォ・ディエドの取得を明らかにした。18世紀に建てられたこの場所は2024年にオープン予定で、ニコラスのアートコレクションを展示するほか、アーティストレジデンスも実施されるという。

ニコラスの所蔵品はほとんど公にされていないが、定評あるアーティストの大作を好んで購入することで知られる。たとえば、2012年にロサンゼルス・タイムズ紙が報じたところによると、エド・ルシェ、ゲルハルト・リヒター、ジグマー・ポルケといったアーティストの作品を、自らが理事を務めるロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)に寄贈している。

ニコラスが所有する作品の中でも特に有名なのが、LACMAに長期貸与されているクリス・バーデンの動く彫刻「メトロポリスII」(2010年)だ。この巨大な作品は、起動すると縦横無尽に張り巡らされた道路や線路の上をミニカーや列車がめまぐるしく走り回り、都市の活気を感じさせる。


注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。
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