スザンヌ・ディール・ブース(Suzanne Deal Booth)
拠点:アメリカ・テキサス州オースティン、カリフォルニア州ラザフォード
職業:投資家、フィランソロピスト
収集分野:現代アート(特に新進作家・女性作家)
ヒューストンのライス大学でジェームズ・タレルの大作《Twilight Epiphany Skyspace》(2012)を見ることができるのは、スザンヌ・ディール・ブースのおかげだ。フィランソロピスト、アートアドバイザー、コレクターとして活動する彼女は、この作品を恒久的に設置するための資金を提供している。また、ニューヨークのホイットニー美術館やMoMA PS1でも、タレルによる光のインスタレーションを実現するために尽力した。
ディール・ブースは、ライス大学とニューヨーク大学で学生時代を過ごしているが、その頃、ヒューストンの著名コレクター、ドミニク・ド・メニルから収集のコツを学んだという。ちなみに、2018年に出版されたメニルの伝記は高い評価を得ている。また、テキサス州出身のディール・ブースは、州南西部のマーファにあるアートスペース、ボールルーム・マーファや、オースティンの美術館、ザ・コンテンポラリーと頻繁に仕事をしている。
彼女の慈善活動の1つに、ザ・コンテンポラリーでの個展と10万ドル(1450万円)の賞金を隔年で授与する賞を2016年に創設したことがある。ロドニー・マクミリアンが初受賞者となった2018年、彼女はやはりトップ200コレクターにランクインしたアマンダ&グレン・R・ファーマンと協力してスザンヌ・ディール・ブース/FLAGアート財団を設立。現在同賞は、20万ドル(約2900万円)の賞金に、カタログ制作や個展開催を含めた合計で80万ドル(約1億1600万円)の価値があるとされている。
ディール・ブースのコレクションは、現在350点を超える。中でも特筆すべきなのが、2019年にカリフォルニア州ナパ・バレーにある家のブドウ畑近くに設置された草間彌生の《Where the Lights in My Heart Go》だ。鏡面研磨されたステンレスの立方体がキラキラ輝くこの作品が、周囲の風景を理想的な形で映し出すよう、周囲には相当の造園作業を施したという。
ディール・ブースはUS版ARTnewsにこう語った。「私は、ローマのスパーダ宮にあるボッロミーニの遠近法の間(*1)に魅力を感じていました。そこで、芝生と並木道を使って、同じような遠近法のトリックを取り入れようと考えたのです。草間の作品は、美を完璧に映し出すものです。そして中に入ると、草間独特の世界がもたらす力を感じることができます」
*1 遠近法を利用して設計された列柱廊で、実際の長さの数倍に見えるとされる。