エドゥアルド・F・コスタンティーニ(Eduardo F. Costantini)
拠点:アルゼンチン・ブエノスアイレス
職業:資産運用・不動産、フィランソロピスト(ブエノスアイレス・ラテンアメリカ美術館創設者)
収集分野:近現代アート、ラテンアメリカ美術
アルゼンチン有数の不動産デベロッパー、エドゥアルド・F・コスタンティーニは、ラテンアメリカの芸術文化振興に多大な貢献をしている。70代後半の彼は、ブエノスアイレス・ラテンアメリカ美術館(略称:MALBA)の創設者で会長だが、この功績はコスタンティーニ財団の実績欄に記載されていない。
2001年には、ディエゴ・リベラとフリーダ・カーロの作品を含む220点以上のラテンアメリカ美術を同館に寄贈。さらに、リベラの作品《Baile en Tehuantepec》を購入して同館の所蔵品としている。その推定価格は2400万ドル(約35億円)で、一時は600点近いコスタンティーニコレクションの中で最も高額の作品だった。しかし、彼にとって一番感慨深いのは、アルゼンチンの著名なコンセプチュアル・アーティスト、レオン・フェラーリによる吊り下げ式の彫刻《Gagarín》(1961)と複雑なテキストによる作品《Cuadro escrito》(1964)だ。コンスタンティーニによると、フェラーリにこの2点を売ってくれるよう説得するのに5年かかったという。2019年に、最近入手したのは何かと聞かれたコンスタンティーニは、近年再評価されているスペイン出身のシュルレアリスト、レメディオス・バロの《Simpatía(La Rabia del gato)》を挙げた。その価格は300万ドル強(約4億4000万円)だ。
コスタンティーニは、1995年に竣工したカタリナスプラザや1998年のアレムプラザなど、ブエノスアイレスを代表する超高層ビルの開発を手がけてきた。また、2009年にはフロリダ州マイアミに近いバルハーバーで、コンドミニアムの建設に着手。2015年に完成したオシアナ・バルハーバーの1戸あたりの販売価格は、最高1900万ドル(約28億円)にものぼった。コンドミニアムの屋外スペースにはジェフ・クーンズの彫刻が2点設置されており、どちらも所有権は居住者にある。
コスタンティーニの収集活動は、いくつもの「過去最高額」を生み出した。2020年にサザビーズで、ヴィフレド・ラムの《Omi Obini》(1943)とレメディオス・バロの《Armonía (Autorretrato Surgente)》(1956)を、合わせて1580万ドル(約23億円)で落札したが、ラムの作品は当時オークションに出品されたラテンアメリカ作家の最高額を記録。一方、バロの作品は、2022年のヴェネチア・ビエンナーレで展示されている。また、2021年にはサザビーズでフリーダ・カーロの《ディエゴと私》(1949)を3490万ドル(約50億円)で落札。ラム作品で樹立した記録を塗り替え、コスタンティーニの所有する作品の中で現在最も高額の作品となっている。
注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。