バーゼル・ダルール(Basel Dalloul)
拠点:レバノン・ベイルート、エジプト・カイロ、イギリス・ロンドン
職業:ITサービス/コンサルティング(Noor Group)
収集分野:近現代のアラブアート
バーゼル・ダルールは、ワシントンD.C.のアメリカン大学で金融を専攻し、ジョージタウン大学でMBAと法学博士号を取得。1999年にカイロを拠点とするヌール・グループを設立し、現在に至るまでCEOを務めている。エジプトとその周辺地域で初めてインターネットのダイヤルアップサービスを開始した同社は、IT関連の幅広いサービスを扱う大手企業へと成長した。それ以前は、インターネット黎明期に起業したマグネット・インタラクティブ・グループで、マイクロソフト、AOL、IBM、メルセデス・ベンツ(北米)、日産、ハーバード・ビジネス・スクール、イーストマン・コダック、バイエル、ケロッグ、M&M/マース、シティバンク、バンク・オブ・アメリカ、20世紀フォックスといった大企業に、マルチメディアウェブサービスを提供していた。
ダルールの両親、ラムジ・ダルールとサダ・エル・フセイニ・ダルールは、1970年代からラムジが2021年に亡くなるまで、世界有数の近現代アートコレクションを構築していた。その収集活動は、息子のバーゼルをはじめ、中東地域のコレクターに世代を超えた刺激を与えている。バーゼルは2017年にダルール・アート財団を設立し、現在は4000点を超える所蔵作品の管理を行っている。主な作品には、ディア・アル・アザウィ、モハメド・メレヒ、ユゲット・カラン、モナ・ハトゥームのほか、2022年のヴェネチア・ビエンナーレの「魔女のゆりかご」セクションで紹介されたバヤ・マヒドディーンなどがある。
ラムジを偲んで行われたインタビューの中で、トップ200コレクターズの1人、スルタン・スード・アル・カセミはこう語っている。「私はラムジと同じ時代に収集活動をしてきました。彼から直接影響を受けたわけではありませんが、コレクター仲間として彼に励まされたのは間違いありません。同じような作品を買っている人がいると、その作品に価値があると感じます。ラムジの場合、これだと思う作品に狙いを定めると、何が何でも買うというところがありました」
バーゼルも2022年だけで40点近い作品を入手するなど、精力的にコレクションを拡充している。この40点の中には、モハメド・メレヒ、アイマン・バールバキ、ナディア・サフェディン、ハディ・シー、ミサック・テルジアン、カティア・トラブルシ、ハメド・イーウィス、マフムード・サイード、シルワン・バラン、アブドゥル・ラマン・カタナニ、マハ・エル・マウラ、ララ・エサイディ、シャフィーク・アッブード、ジュワード・サリムなどの作品が含まれる。特に、コレクションに欠けていたジュワード・サリムの作品についてバーゼルは、2022年のオークションで「ぴったり100万ドル(約1億4500万円)で落札する機会を逃すまいと思った」と、US版ARTnewsのメール取材に答えている。
注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。