ニコラ・エルニ(Nicola Erni)
拠点:スイス・シュタインハウゼン
職業:投資家
収集分野:現代アート、写真
ニコラ・エルニが所有する膨大な写真コレクションには、1960年代から70年代に活躍したポップカルチャーの旗手たちがパーティに集う姿を捉えたものが多い。2011年には、エルニが自ら編集に携わったフォトブック『Zeitgeist & Glamour(時代精神と魅惑)』を出版。アンディ・ウォーホルのスタジオ「ファクトリー」や伝説のナイトクラブ「スタジオ54」、アメリカ国外のナイトクラブなどで撮影されたこの時代のセレブリティの写真を網羅・解説している。
1987年に発表されたジャン=ミシェル・バスキアの《Riddle Me This, Batman》は、エルニにとって特に思い入れがある。2013年にチューリッヒ郊外のツークにできた彼女の私設美術館に初めて設置した作品だからだ。この美術館は当初一般公開されていなかったが、現在はガイド付きで見学することができる。また、増え続けるコレクションを収蔵するため、ツークから近いシュタインハウゼンに2つ目の展示スペースを建設中だ。バスキアの《Riddle Me This, Batman》が最後にオークションに出品されたのは2010年のサザビーズ・ニューヨークで、落札額は620万ドル(約9億円)だった。その後、バスキア作品の価格は高騰しているが、その時点ではバスキア晩年の作品の最高落札額だった。
また、エルニのコレクションには、ヘルムート・ニュートンの《Sie kommen, Paris - Dressed and Naked, Vogue Studios》(1981)、ジャン・パオロ・バルビエリの《Jill Kellington, Port Sudan》(1974)、マリオ・テスティーノの《Kate Moss》(2002)といった大物写真家の作品も含まれている。2015年には世界的なファッション写真家のティム・ウォーカーに、ヒエロニムス・ボスの絵画《快楽の園》(1503-15)を独自の解釈で表現した写真作品の制作を依頼。出来上がった作品は、オランダのスヘルトーヘンボスにある北ブラバント美術館で展示されている。
エルニの所蔵作品は、たびたび国際的な展覧会に貸し出されている。2018年にパークハイアット パリ=ヴァンドームで開かれたファッション写真展「Vive la Mode」では、彼女のコレクションからアーヴィング・ペン、リチャード・アヴェドン、ヘルムート・ニュートンの作品が展示された。最近も、リチャード・アヴェドンやスティーブン・ショアによる作品のほか、テート・モダンで2020年に行われたウォーホルの回顧展に大作《Sixty Last Suppers》(60枚の最後の晩餐)(1986)を貸し出すなど、話題を集める展覧会で所蔵作品が展示されている。
注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。